自宅で介護していて、排せつのお悩みを抱える方は多いでしょう。おむつの尿もれは、介護を受けるご本人の尊厳を配慮する必要もあり、衛生面やにおいの問題もあります。かといって、ご本人や周囲の人に話しにくいデリケートな問題。
尿もれへの解決には、まずは正しい知識を得ることが大切です。エステーで介護専用の消臭剤「エールズ」を担当する三浦健治が、「おむつフィッター3級研修」の中から、排せつ用具のひとつであるおむつについて学んだことを、前編・後編の2回でお伝えします。
記事監修:むつき庵
尿もれの原因は「おむつが合っていない」こと
介護現場で尿もれの起こる原因には、「大人用おむつが、介護を受けるご本人に合っていない」ことが挙げられます。正しく使っているようでも、細かく見ていくと問題となるポイントがいくつかあります。ひとつずつチェックしていくと、おむつの尿もれ問題はぐっと解決に近づきます。
おむつのサイズが合っていない
サイズが大きすぎると、身体とおむつの間に隙間ができてしまい、そこから尿もれします。
しかし、小さすぎると皮膚を圧迫したり、こすれてしまいます。ご本人がかゆみや違和感を感じると、おむつを自分でずらしたり、中に手をいれてしまいます。そうすることで、身体とおむつに隙間ができ、尿もれの原因となるのです。
おむつと尿量が合っていない
排尿量がおむつが吸収できる量を超えてしまうと尿もれの原因になります。
大人用おむつや尿とりパッドには、吸水量の目安を「2回分(1回の排尿量を150mlとした場合)」のように、排尿回数で示されています。一般的に、ご本人が自分でトイレに行けたり、介護者がこまめにおむつやパッドを替えられる場合は「1〜2回分」、夜間や長時間替えられない場合は「4回分」以上の商品を選びます。
しかし、排尿の回数だけでは判断しきれません。1回の尿量はひとそれぞれ違うからです。一度にたくさん排尿したり、勢いが強すぎると、おむつやパッドが吸水しきれず尿もれする場合があります。
おむつのあて方が合っていない
おむつのサイズはぴったりでも、あて方がよくないと尿もれします。ポイントは、尿をせき止める防波堤の役割を果たす、脚まわりの立体ギャザー。次の3点に注意してください。
- 立体ギャザーは立っているか?
- 足の付根に沿っているか?
- 足の動きを阻害していないか?
ギャザーが内側に倒れるようなあて方は、尿が横もれする可能性があります。
また、尿とりパッドが左右のギャザーの間にしっかり収まっているか、確認してください。パッドが上に乗ってしまうとギャザーを潰して倒れやすくなり、尿もれの原因となります。
「本人からの視点」で原因を考える
尿もれ問題で最も大切なことは、「本人からの視点」で原因を考えることです。
おむつが合っていても、「陰部などの痒みなどで掻いてしまって空間ができる」「尿意を感じて、おむつを下ろしてしまった」など、ご本人の気持ちや違和感を見落としてしまうと、いつまでたっても尿もれ問題は解決しません。介護を受けるご本人としっかり向き合うことが解決への糸口になるでしょう。
排せつアウター ✕ 排せつインナーを正しく組み合わせる
尿もれ対策は、排せつアウター ✕ インナーの組み合わせを見直すことがポイントです。排せつインナーは尿を直接吸収するもの、排せつアウターはインナーを固定するものと考えます。
インナーとアウターを組み合わせるとき、インナー1枚にアウター1枚が原則です。
パンツ型おむつで対応できる尿とりパッドは中(容量)サイズまで。テープで止めるおむつや、テープ型とパンツ型を兼ねた2wayタイプは大(容量)サイズまで対応します。
長時間、パッドを替えられない場合は特大サイズを選ぶことになりますが、紙おむつの中には収まりません。布製のホルダーパンツがおすすめです。
また、尿とりパッドを2枚以上重ねて使っている方がいます。尿もれを心配すると多めに使いたくなりますが、パッドの裏側は防水フィルムなので、重ねた下のパッドまで尿が流れることはありません。何枚重ねても吸収量は足し算にはならず、コストとごみ量が増します。
さらに、パッドを重ねることで厚みが増して隙間ができたり、立体ギャザーがつぶれ、または高さが低くなるなどして、防波堤の役割を果たせなくなることがあります。尿もれのリスクはむしろ高まるので、基本はアウター1枚に対して尿とりパッドも1枚で使用してください。
まとめ
「おむつフィッター」は排泄用具の情報館「むつき庵」がつくられた民間資格で、これまで8000人以上が研修を受講しました。エステーで介護用消臭剤を担当する三浦も、「むつき庵」の研修を経て「おむつフィッター3級」を取得。研修において、「自分でおむつを付けて排尿する課題は、貴重な体験となりました」と振り返ります。
介護を受けるご本人の気持ちになることも、問題を解決する一歩になります。
後編では、尿もれ対策に役立つ「排せつアセスメント」の方法をご紹介します。