季節のくらし

夏も安心!おいしく長持ちさせる 食材保存のワザ

1.気をつけたい3つのポイント

気温が上がり始めると、食材の傷みやすいシーズンがやってきます。家庭での保存にも、いつも以上に気を配らなければいけません。
実は、冷蔵庫へ入れるときにひと手間かけるだけで、鮮度を長くキープできる野菜もあるのだそう。食材をおいしく保存するためのテクニックを、東京農業大学の徳江千代子さんに聞きました。
まずは、食材保存の基本から。
徳江千代子さん
東京農業大学客員教授
徳江千代子さん
プロフィール
徳江千代子さん

プロフィール

東京農業大学客員教授
徳江千代子さん
「食品の保蔵・加工における多様な食品機能」をおもなテーマに研究を続ける。
野菜や果物の成分、栄養、保存方法、食品の賞味期限や保存方法等を研究。
著書 「野菜がいちばん」(いしずえ)、
監修書 「賞味期限がわかる本」(宝島社)、「野菜と果物を安心して食べる知恵」(二見書房)、「野菜のストック便利帳」(大泉書店)等、他多数
「東京農業大学の野菜レシピ」(PHP研究所)
日本テレビ「世界一受けたい授業」、TBS「はなまるマーケット」等多くのメディアに出演。
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夏はより注意が必要!食材保存3大ポイント

①食材が傷む原因を、できるだけ取り除く
食材は温度や湿度、酸素、微生物、青果が発生するガスなど、さまざまな原因がからみ合って傷んでいきます。さまざまな原因と対策をざっとチェックしましょう。
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②野菜・肉・魚などの保存方法をチェック
野菜や肉・魚、卵など毎日食べる食材だからこそ、正しい保存方法を知っておきたいもの。冷蔵庫に入れる前のひと手間で、食材の鮮度をより長くキープできます。
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③冷凍や常温保存の小ワザを知ろう
冷凍すればいつまでも食べられるなんて、勘違いしていませんか? 適切な冷凍の方法を知って、おいしく食材をいただきましょう。また、お米や粉類などを常温保存する際の便利なテクニックも紹介します。
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食材が傷む原因とは?

食材が傷む原因は、温度や湿度、酸素、微生物、青果が発生するガス、酵素、光などさまざま。夏こそ特に気を付けたいのは温度と湿度です。菌が繁殖しやすいのは37~40℃で、湿気の多い場所。ペーパータオルやラップなどで水分と酸素をシャットアウトし、日の当たらない涼しいところに保存するのが基本です。
より防腐性を高めるには、水分を低下させる働きのある塩や、菌が嫌う酢などを取り入れるのも効果的。古くから日本で親しまれている塩漬けや酢漬けなどの保存方法は、とても理にかなっているのです。

野菜や果物から発生する“エチレンガス”

まだ硬いキウイでも、りんごの隣に置いておくと、早く食べ頃になる――なんて話を聞いたことはありませんか?
これは、熟成を促進するエチレンガスが原因です。りんごや桃、メロン、アボカド、ブロッコリーなどから多く発生するガスで、周りの青果にも働きかけます。裏を返せば、すでに熟している野菜や果物の近くに置くと、老化を進めてしまうのです。
特に影響を受けやすいのはきゅうりや白菜、さやえんどう、パセリ、キウイなど。同じ野菜室に入れている場合は要注意。エチレンガスを吸着する「脱臭炭 野菜室用」などを活用するとよいでしょう。次は各青果の保存方法を紹介します。

2.基本の保存テク

買ってきた食材を冷蔵庫へ入れる前にひと手間かけるだけで、より長持ちさせることができます。包み方や置き方ひとつで保存性が変わる生鮮食品。正しい保存方法を覚えておきましょう。

野菜の保存

スーパーなどで購入する野菜は、セロファンや袋で包装されているのがほとんどです。そのまま保存していると、蒸発した水分が水滴となって野菜にかかり、濡れた部分から傷んでいってしまいます。また、カット野菜は、カット数が多ければ多いほど、雑菌が繁殖しやすくなるのも注意したいところ。風味を長持ちさせるためには、できるだけ丸ごと購入し、一度に使い切るようにするのが重要です。

ブロッコリー
もっともエチレンガスを出しやすいブロッコリーは、ガスの発生源であるつぼみ(小さなつぶつぶの部分)を集中ケアしましょう。乾いたペーパータオルでつぼみをしっかりと包み、ラップで覆って、さらにポリ袋をかぶせます。自身が出すエチレンガスで、早ければ3日ほどで黄色くなってしまうブロッコリーも、こうしておけば2週間ほど保存が効きます。

レタス
すぐにしなびてしまうレタスは、水分の抜けていく芯をきっちりカバーするのがコツ。芯の下部を2、3mmスライスして落とし、断面に小麦粉か片栗粉を薄く塗って、水分の蒸発を防ぎます。最後に乾いたペーパータオルでしっかりと芯を包み、葉の部分も覆って、ラップをかければ2~3週間はもつでしょう。

キャベツ
中心から水分が抜けていくキャベツには、芯を三角形にくりぬいて、濡れたペーパータオルを詰めます。蒸発した水分を、濡れたペーパータオルが吸い、また野菜に戻してくれるしくみです。

大根や白菜などの根菜・葉物野菜
土に植わっている野菜は、生育している状態で置くのがベスト。野菜を新聞紙などに包み、根を下、葉を上にして、立てて保存しましょう。寝かせて保存するとストレスがかかり、傷みやすくなってしまいます。

おくらやきゅうり、なすなどの夏野菜
夏野菜は、冷やしすぎると低温障害を起こして傷みやすくなります。冷気が直接あたらないように一本ずつペーパータオルや新聞紙に包んで、温度の低すぎない野菜室で保存しましょう。

バナナ
バナナが黒ずんでしまうのは、皮に含まれる褐変物質・ポリフェノールが原因です。長持ちさせるためには、皮をむくのがポイント。実だけをラップに包み、冷蔵庫で保存すればOKです。

じゃがいもやかぼちゃ、玉ねぎは常温保存でOK
イモ類やかぼちゃは、涼しいところに置いておくとデンプンが分解され、より甘みが増します。まるごと新聞紙に包み、風通しがよい日陰で保存しましょう。玉ねぎは水分が多いので、ネットに入れ、風の当たる場所に吊るしておくといいですね。

そのほかの生鮮食品を保存するコツ

肉や魚や水分オフが鉄則
買ってきたトレーに入れたまま保存するのは絶対にNG。水分や血がトレーに残っているので、微生物が繁殖しやすくなります。冷蔵庫へ入れる前にペーパータオルで水分をふき取り、ぴっちりラップで包み、ポリ袋をかぶせて保存しましょう。さばいていない魚は、内臓を出して塩水で洗ってから保存するのも効果的です。

卵はとがったほうを下にする
卵の殻には無数の小さな穴が開いており、微生物が出入りしています。右図のように、丸いほうには空気の入った気室があるため、こちらを上にして保存すると、中身に微生物が入りにくくなります。ドアポケットは、振動が多く、温度変化しやすいので、パックのまま冷蔵庫の奥に入れるのがおすすめです。
また、白身に含まれるリゾチームという酵素は、菌を分解して黄身を守っています。リゾチームの働く期間が、卵の賞味期限。ゆでるとその機能は失われてしまうので、ゆで卵よりも生卵のほうが長持ちすることも覚えておきましょう。

冷蔵庫での食材保存のポイント

  • 冷蔵庫は冷気が循環するように、庫内の3分の1を空けておきましょう。頻繁な開け閉めも、中の冷気を逃す原因になります。
  • 野菜や肉などの食材にはもともと菌が付着しているため、冷蔵庫内に菌が持ち込まれて繁殖することも。庫内はこまめに掃除をして、いつも清潔な状態に。
  • 飲み物や氷、もともと風味が薄めの食材などは、ニオイ移りにも気を付けなければなりません。脱臭剤を上手に活用するといいでしょう。

3.お役立ちテク

買い置きをしたときに役立つ冷凍のワザや、常温保存のコツをご紹介します。さまざまな食べ物に応用できるテクニックもあるので、試してみてはいかがでしょうか。

冷凍保存&解凍のコツ

家庭用冷凍庫の平均温度は-18℃前後。タンパク質や脂質は-40℃以下で保存しない限り、徐々に分解され、うまみが失われていきます。詰め込みNGの冷蔵庫とは違って、冷凍室は中身を満杯にして冷気を逃さないように心がけ、冷凍した食材はできるだけ早く使い切るのが基本です。
肉類なら、ハンバーグのタネを作ったり、塩麹や味噌に漬けるなど、下ごしらえのあとに凍らせるのが有効。調理が面倒なら、塩水か氷水にくぐらせてからラップに包んで冷凍するだけでも、氷の膜が酸化を防いでくれます。
家庭用冷凍庫では、冷凍するときに食材の中に氷の粒ができ、溶けるとそこに穴があいてしまいます。そんな食材を電子レンジなどで急速解凍すると、氷の溶けた水分が吸収されず、ドリップ(液汁)になって出てしまい、風味が損なわれるのです。解凍は、冷蔵庫で時間をかけて戻していくように心がけてください。

常温で保存できる食材は?

お米や調味料、粉類、乾麺などは常温で保存しても大丈夫。ただし、キッチン周りや床の上、天井の近くは温度や湿気の影響を受けやすいので、流しの下や奥など、できるだけ涼しくて暗い場所にしまいましょう。
お米
購入するときには、精米日の近いものを選びましょう。少量を都度使い切るのが理想ですが、10kgなどまとめて買うときは、熱がこもりにくいように小分けで保存するのが最適です。
また、夏場はお米の虫が発生しやすくなるので注意しましょう。虫の発生を予防するために「米唐番」などの米びつ用防虫剤を使うのも有効です。

小麦粉・片栗粉・パン粉などの粉類
ダニの発生に気を付けたい粉類は、缶などの密封容器に移し替えて保存します。内蓋やパッキンの付いた容器や、乾燥剤・脱酸素剤などを常備しておくと重宝するはず。紙袋のままでは、すきまから虫が入ってくる可能性があります。少量なら、缶に移して冷凍するのも手です。

油や調味料
油は酸化が早いので、開封したらできるだけ早く使います。特に夏は酸化が進みやすいため、油の二度使いで下痢などを引き起こす危険もあるのです。味噌、醤油も開封とともに変色が始まるので、冷蔵庫のスペースに余裕があれば、冷やして保存するとよいでしょう。

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