これから猫を飼おうと考えている方は「どのくらいの費用がかかる?」「トイレはどこに置いたらいい?」など、気になることがあるのではないでしょうか。猫は基本的に室内で飼う動物なので、猫との暮らし方にはさまざまな注意点があります。
今回は、これから猫を飼う方に向けて知っておきたいポイントや飼い方の注意点などをお伝えします。猫は繊細でストレスを感じやすいため、猫と快適に暮らせるように、飼い主さんとして心得ておくべきことを確認しておきましょう。
猫を飼うために必要な費用
猫を飼うとなるとどのくらいの費用がかかるか気になる方も多いのではないでしょうか。アニコム損害保険株式会社のアンケート調査によると、猫に1年間にかける費用は平均169,247円(※)ということです。
また、新しく猫を迎えるときは、ベッドやトイレ、食器などの日用品を揃える必要があるため、初期費用もかかります。猫を飼うとどのような費用が必要なのか確認しておきましょう。
フード代
猫の食事はキャットフードがおすすめです。人間の食事を欲しがるときがあるかもしれませんが、基本的に人間の食事は塩分や糖分が多く、猫には食べると危険な食材、食べすぎると危険な食材が含まれていることもあります。そのため猫用に作られたキャットフードを与えるのが安心です。キャットフードには主に次の4種類があります。
- 総合栄養食
- 療法食
- 間食
- その他の目的食
毎日の食事には総合栄養食がおすすめです。猫に必要な栄養素をすべて含んでいるため、水と適切な量の総合栄養食だけで栄養が満たされます。
療法食は病気をケアするために栄養が調整された食事、間食はおやつでしつけのごほうびやコミュニケーションなどに役立ちます。その他の目的食には、副食・おかずタイプ、栄養補助食があります。副食・おかずタイプは、総合栄養食と併用するフードで、人間の食事のおかずのようなもので、バラエティ豊かな種類があります。ただし、副食・おかずタイプばかりでは栄養が偏るため、総合栄養食の補助として使いましょう。栄養補助食は、ビタミンやミネラルなど特定の栄養素を補うことを目的としたものです。猫のフード代は年間50,000円程度(※)かかるといわれています。
日用品代
猫を飼うときは、さまざまな日用品を揃えておく必要があるので、その費用も考えておきましょう。猫を迎えるまでに用意しておきたい日用品には次のようなものがあります。
- トイレと猫砂
- 食器(フード用と水用)
- ケージ
- 爪とぎグッズ
- キャリーバッグ
- ベッド
- ブラシ
遊具代
猫が退屈しないようにおもちゃや遊具を用意しておきましょう。猫は高さがある遊びが好きなので、キャットタワーがおすすめです。キャットタワーにもさまざまなタイプがあり、金額もさまざまです。猫は基本的に室内で飼うので、キャットタワーがあると運動不足を解消できるでしょう。
ワクチン代
猫は室内飼いでもウイルスによる感染症にかかる場合があります。重症化すると命に関わることがあるため、ワクチン接種で感染症を予防しましょう。
接種スケジュールは、初めてのワクチンを接種する週齢やワクチンの種類などによっても異なるため、通院時に獣医師に確認、相談しましょう。
猫がワクチンで予防できる感染症には、猫ウイルス性鼻気管炎・猫カリシウイルス感染症・猫汎白血球減少症・猫クラミジア感染症・猫白血病ウイルス感染症・猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)などがあります。
数種類のワクチン成分を1回の注射で接種できる混合ワクチンがあり、その中では3種混合ワクチン(猫ウイルス性鼻気管炎・猫カリシウイルス感染症・猫汎白血球減少症)が一般的です。
また、ワクチンの費用は動物病院によって異なりますので接種前に確認するようにしましょう。
病院代
猫が病気や怪我で動物病院にかかると診療費が高額になる可能性があります。人間のように公的な健康保険制度がないため、医療費は全額自己負担です。猫は腎・泌尿器系の病気にかかりやすいため、将来的に高額な治療費がかかる場合があります。普段から健康管理に注意し、いざというときのためにペット保険を契約しておくと安心です。
トリミング代
猫のシャンプーやカットをするトリミング代は、利用する店によって料金が大きく異なります。ほとんどの猫は体を舐めてグルーミング(毛づくろい)できますが、中には上手くできない猫もいます。また、短毛種はブラッシングやコーミングである程度の抜け毛を処理できますが、長毛種は抜け毛を取りきれなかったり、ブラッシングが苦手で毛が絡まったりして毛玉になってしまいます。
ペットショップや動物病院でトリミングをお願いすると、費用はシャンプーだけで4,000円〜8,000円程度です。ただし、トリミングで知らない人に体を触られることを嫌がる猫も多いです。猫にとってトリミングがストレスになってしまう場合、自宅でのトリミングを検討しましょう。
(※)【参考】アニコム損害保険会社「【2021最新版】ペットにかける年間支出調査」
猫を室内で飼う際の注意点
猫は室内飼いが基本です。室内で飼うことで交通事故や感染症にかかるリスクを低下させることができます。また、ご近所トラブルの心配も減らせるでしょう。ただし、室内で飼うときは、猫が安心して暮らせるように環境を整えておく必要があります。猫を室内で飼う際の注意点を解説します。
物の配置に注意する
猫が快適に暮らせるよう室内の環境を整えておきましょう。猫は身軽で軽々と高い場所に飛び乗ります。壊されて困るものは引き出しに収納しておきましょう。感電の恐れがある電気コードは片付け、猫にとって害がある観葉植物は飾らないようにしましょう。また、猫は上下運動が好きなので、キャットタワーを設置するとよいでしょう。
快適な室温に調整する
猫にとって快適な温度は20〜28℃といわれています。夏はエアコンを活用すると快適な室温をキープできますが、冷え過ぎには注意しましょう。猫は比較的暑さに強いといわれますが、湿度が高い環境は苦手です。エアコンを使わずに窓を開けて風を通す場合は、猫が脱走しないようストッパーをつけておきましょう。
トイレの置き場所に注意する
トイレを置く場所は、家の中の静かな場所を選びましょう。玄関や洗濯機の近くなど大きな音がする場所に置くと猫は排泄中に驚いてしまい嫌な記憶が残るため、そのトイレを使いたがらなくなってしまうことも。廊下や部屋の入り口など、家族がよく通る場所も避けた方がよいかもしれません。猫が落ち着いて排泄できる場所を選んであげるようにしましょう。
抜け毛対策をする
猫を飼っている人の悩みの一つが抜け毛です。とくに春と秋の換毛期は抜け毛が多いため、服にもたくさんの毛がついて掃除が大変です。猫の抜け毛対策にはブラッシングして抜け毛の量を減らしておくことがおすすめです。こまめに掃除ができない方は、抜け毛掃除用の粘着テープやグローブなどもありますので、使いやすいものを揃えておくとよいでしょう。
怪我や病気のときの対応
室内で飼っている猫でも怪我をするときがあります。たとえば高い場所から落下して捻挫や骨折することも。歩き方がいつもと違ったり、動きたがらないときは骨折の可能性もあるので動物病院に連れて行き、レントゲンを撮るなどの相談をしましょう。
また、猫がかかりやすい病気には「慢性腎臓病」「膀胱炎」「胃腸炎」などがあります。慢性腎臓病の場合はオシッコの色が薄くなります。普段からオシッコをチェックしておくと病気のときに気付きやすいでしょう。また、膀胱炎になるとオシッコのニオイや色がいつもと違ったり、排尿時に痛そうに鳴いたり、何度もトイレに行ったりします。慢性胃腸炎は嘔吐や下痢を繰り返します。猫の変化を見極めて、いち早く病気に気づいて動物病院に連れて行けるよう、普段からよく観察しましょう。
2匹以上飼う場合の注意点
猫を2匹以上飼うときは、もともと飼っていた猫にも新しく迎える猫にも配慮が必要です。猫の多頭飼いを検討している方は、次のポイントに注意しておきましょう。
トイレの数は「猫の数+1」が理想
猫を2匹以上飼う場合、トイレは共用ではなく、猫の数だけ用意しておきましょう。理想的な数は「猫の数+1」です。他の猫が気になって落ち着いて排泄できない猫や、他の猫の排泄物で汚れたトイレを嫌う猫もいますので、専用のトイレを用意してあげましょう。
食器もそれぞれ用意する
猫の食器は食事用と飲み水用が必要です。食器も共用にせず、それぞれの猫に専用のものを用意しましょう。共用にすると十分な量を食べられない猫がいたり、ケンカになったりする可能性があります。猫が安心して仲良く暮らせるように食器はそれぞれの猫に用意しましょう。
猫同士が距離を保てる空間を確保する
猫は単独行動を好み、パーソナルスペースを必要とします。他の猫と2メートル以上の距離を保てる空間を確保しましょう。ステップやキャットタワーで高い場所に寛げる空間を作ったり、仕切りを設置したりすることでも距離を保ちやすくなります。
猫を飼うときに知っておきたいこと
お風呂は?
お風呂は基本的には必要ありません。水やお風呂が好きな猫であれば、入れても構いません。お風呂に入れる場合は、猫の皮膚がデリケートなことを意識しておきましょう。人間のシャンプーを使うと刺激が強すぎて皮膚が荒れてしまうことがありますので、猫用のシャンプーを使いましょう。
マイクロチップ義務化とは
2022年6月1日よりブリーダーやペットショップなどで販売される猫はマイクロチップの装着が義務化されました。猫を購入したらマイクロチップが装着されているので自分の情報に変更登録する必要があります。また、他者から猫を譲り受けた際、マイクロチップ装着自体は義務ではないですが、獣医師にマイクロチップの装着を依頼した場合は飼い主さんの登録が必要です。住所や連絡先が変更になったときや、猫が亡くなったときも手続きが必要になります。
マイクロチップを装着することで、迷子になったときに飼い主さんの情報がわかります。また、災害などではぐれてしまったときも飼い主さんの情報がわかるため、飼い主さんの元に戻ることのできる可能性が高まります。情報の登録や変更はパソコンやスマートフォンから手続きすることができます。
猫がストレスを感じやすい環境
猫はデリケートでストレスを感じやすい動物です。猫がストレスを感じやすい環境には、主に次のようなものがあります。
- 引越しなど環境の変化
- 騒音
- 運動不足
猫は繊細なので、とくに環境の変化にストレスを感じます。たとえば引越しやリフォームなど大きな環境の変化だけでなく、ベッドや食器、トイレなど身の回りの環境の変化にも猫はストレスを感じてしまうのです。環境が変わったときは、できるだけ落ち着いて過ごせるようにしてあげましょう。また、猫が使う日用品を新しく交換するときは、いきなり変えるのではなく、徐々に慣れさせていくことをおすすめします。
騒々しい環境も猫は苦手です。大きな声や、掃除機・洗濯機など家電の大きな音は、猫にとってストレスとなります。猫がストレスを感じなくてすむように、トイレは静かな場所に置いてあげましょう。
また、室内で飼うとどうしても運動不足になるので、猫が好きな上り下りの運動ができるようにキャットタワーを用意するとストレス解消になるでしょう。
トイレ環境にはとくに気をつける必要がある
猫はきれい好きな動物なので、とくにトイレ環境には気をつけておきましょう。排泄物が片付いていなかったり、臭かったりすると猫はトイレを使うのを嫌がります。その結果、粗相したり、膀胱炎になったりする可能性があるため、猫の健康のためにもよくありません。
消臭効果が高いエステーの猫用システムトイレ
Pick UP
まとめ
猫を飼うときに飼い主さんが知っておきたいことをまとめてお伝えしました。猫を飼うにはお金もかかります。フードやトイレの猫砂など日常的な費用だけでなく、病気になったときの医療費がかかる場合もありますので、猫を飼うための予算として確保しておきましょう。
また、猫を飼い始めて「なかなか言うことを聞いてくれない」と困るときは、ストレスが原因というケースもあります。猫の気持ちに寄り添い、ストレスを感じやすい環境を取り除いてあげることで、信頼関係が築けるでしょう。猫を飼うためのポイントを知って、猫と暮らす生活を楽しんでください。
監修/小島麻里先生プロフィール
マリどうぶつ診療所 院長
酪農学園大学獣医学部獣医学科を卒業後、10年間小動物臨床に従事。
地域密着型の1次病院で経験を積み、東京大学動物医療センターで内科系研修医と並行して臨床研究を行う。
2022年11月マリどうぶつ診療所開院。潜水士およびペット管理栄養士取得。7歳になる保護猫2匹と暮らす。
マリどうぶつ診療所HP