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獣医師に聞く!愛猫のストレスや思わぬ病気をもたらすニオイ問題とは

室内で猫を飼う方にとって、トイレをはじめとするニオイは気になるところ。でも、それは人間だけでなく、猫にとっても大きな問題なのです。獣医師の佐藤貴紀先生に、猫にストレスを与えるニオイについて聞きました。

猫は人より5倍ニオイを感じやすい

猫は、ニオイを感じる嗅細胞を、約2億個も持っているとされます。人間が約4000万個ですからその5倍です。嗅細胞が集中する嗅上皮の面積も広く、人間は2〜4cm²であるのに対し、猫は5〜10倍の20cm²にもおよびます。そのため、一概には言えませんが、猫は人間の5倍以上も、ニオイに敏感だと考えられます。

猫はストレスを感じやすく、嗅覚が鋭い猫にとっては、嫌なニオイがその一因になる可能性があります。一般に、猫は柑橘類やハーブのニオイが苦手です。そのほかにも、お酢や塩素系漂白剤、カレーなどの香辛料、ニンニクや唐辛子も嫌がります。

特に注意してほしいのが猫自身のトイレのニオイ。きれい好きな猫は、尿や便のニオイを嫌がって、上手にトイレができなくなることがあります。そのために、便秘や膀胱炎になる猫が少なくありません。

猫のストレスサインを見逃さない

猫がトイレにストレスを感じると、ふつうの排せつ行動をとらなくなります。トイレに行く回数が減ったり、逆に頻尿になっているときは要注意です。また、わざとトイレ以外の場所で排せつしたり、トイレの後に人間を呼びに来るような行動も、ストレスのサインと考えられます。

その他にも、毛が抜ける、気性が荒くなる、食欲不振などの変化を感じたら、ストレスが原因になっている可能性があります。嘔吐や下痢などの症状があれば、すぐに動物病院で受診してください。

そうなる前に、もっと小さな兆候に気づいてあげられるとよいでしょう。

猫はトイレで排せつする際、まずニオイをかぎます。猫砂を前足でかき分けて、できた穴の中に尿や便を出します。最後に、再びニオイをかいで砂をかけて隠す、という行動をするのが通常です。

しかし、トイレのニオイを嫌がっていると、前足でかき分けなくなるなど、一連の流れをふだん通りに行わなくなり、トイレの環境やニオイに問題がある可能性があります。 その他にも猫がストレスを感じる行動などをチェックシートにまとめましたので、確認してみてください。

獣医師がみるありがちNG行動とは?

基本的なことですが、猫の排せつ後に長時間トイレの猫砂を放置してはいけません。猫は尿も便もニオイが強いですが、猫砂に消臭機能があると、飼い主さんが気づかないことがあります。

排せつの回数は猫によって差がありますが、日中3〜4回はトイレに行くのがふつうなので、こまめに交換してあげるようにしましょう。仕事などで家を空けているとそれはできないので、トイレを複数置くなどして対策する飼い主さんもいます。

また、ペット用のグルーミングスプレーで、猫をブラッシングしている飼い主さんもみかけます。スプレーにはニオイがついていて、人間にはよい香りに感じられるのですが、多くは犬用です。ニオイの好き嫌いが多い猫にとっては、ストレスになる可能性があるので、これもNG。

猫を飼っているお宅ではアロマを炊いたり、ハーブを栽培するのも控えてください。細かいことですが、スパイスの効いた料理を食べた後は、息や手にニオイがついている可能性があるので、猫と遊ぶのは少し時間が経ってからがよいでしょう。

猫は、群れをつくらず単独での行動を好みます。他の動物と比べ、人間と一緒に暮らすことにストレスを感じやすい生き物です。私たちが想像する以上に、ニオイにストレスを感じている可能性があります。飼い主さんが、しっかりケアしてあげましょう。

佐藤貴紀先生プロフィール

獣医師(獣医循環器認定医)
VETICAL 動物病院(オンライン相談)代表取締役


小学校の時に、原因不明で愛犬を亡くしてから「動物の命を救いたい」と獣医師を目指す。専門は「循環器」。
「一生のかかりつけ医師」を推奨するとともに、人間同様、動物の医療も、専門分野別治療、予防医療に力を入れている。
過去には、テレビ朝日「なにわ男子 まだアプデしてないの?」はじめ数々のメディアに出演・寄稿。「動物たちのお医者さん」(小学館ジュニア文庫)、「犬の急病マニュアル」(鉄人社)などの書籍出版。

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