近年、“サステナブルファッション”という言葉を耳にするようになりました。サステナブルファッションとは、衣服の生産から着用、廃棄までのプロセスで、地球環境や持続可能な社会に配慮した取り組みのこと。服の大量生産・大量廃棄が見直され、地球や未来のことを考えた服選びや大切に長く着るという考え方に注目が集まっています。そこで、一般社団法人サスティナブルファッションプロモーションジャパン代表でスタイリストの長田広美さんに、すぐに始められるサステナブルファッションのポイントを教えてもらいました。
新しい服を購入するときに意識すべきポイントとは…?
せっかく気に入って購入したのに、ほとんど着ることなく、タンスの肥やしになってしまっている服は、誰しも1着はあるでしょう。まずは、こうしたタンスの肥やしを作らない服選びがサステナブルファッションの第一歩。新しい服を購入する時に意識するべき3つのポイントを紹介します。
●長く着られる服を選ぶ
服を選ぶ時は、自分の身体に合った、似合う服を選ぶことが大切です。特に、コンサバ系のアイテムであれば、飽きのこない定番のデザインのものが多く、長く着られます。一方で、定番アイテムだけでなく、流行りの服を身に付けることで気分が華やぐこともありますよね。トレンドのアイテムを取り入れる際は、すべての流行を取り入れるのではなく、自分に合うものだけを選ぶようにするとよいでしょう。
そのためにも、自分に似合うスタイルを知ることが重要。自分のスタイルを知るには、骨格から似合う服のスタイルを診断する骨格診断や、肌の色や髪の色などから似合う色を診断してくれるパーソナルカラー診断などの診断ツールを活用するのも手です。また、自分の好みも大事ですが、友人や家族などの評価も有用です。客観的な意見も参考にしながら、自分のスタイルを見つけていくと良いでしょう。
●サステナブルな素材、環境に配慮してつくられた服を選ぶ
服の素材は様々ありますが、大きく分けて、天然繊維と化学繊維の2種類があります。天然繊維は、綿(コットン)や麻(リネン)など天然の植物からとれる素材を使用したものや、絹(シルク)や羊毛(ウール)などの、動物が生み出す素材から生成するものがあります。対して化学繊維は、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維や、植物性のセルロースから作るレーヨン、キュプラなどがあり、化学的なプロセスで製造されます。
ただし、どの素材が良いとは一概には言えません。例えば“綿”は、天然繊維で環境に良いイメージがありますが、綿花栽培には大量の農薬や水が使用されており、逆に環境に負荷を与えてしまっているのです。それを解決するのが、オーガニックコットンです。安全性に配慮し、太陽や大地、水などの自然を生かし、厳しい基準で栽培・生産されているため、環境に優しいのです。他にも、リサイクルポリエステルなど、元の素材を再利用して使う、再生原料の素材もあります。そういった、環境に配慮した素材の服を選ぶのもよいでしょう。
特にサステナブルな取り組みをしているアパレルブランドでは、HP等でモノづくりの過程を公開していることもあります。そのような情報を自分で調べて、サステナブルなつくられ方をした服を選ぶのもおすすめです。
●複数のコーディネートが思い浮かぶ服を選ぶ
服をタンスの肥やしにしてしまう、と言う人に多いのが、衝動的に物を買ってしまうというパターンです。そんな人は、ちょっとしたポイントで買いすぎを防ぐことができます。それは、「自分が持っているアイテムとの組みあわせが3つ思い浮かんだら買うこと」です。
合わせるアイテムは、コートやネックレス、小物でもなんでもOK。色や形などを考えて、合う組み合わせが3つ思い浮かんだらタンスの肥やしにはなりません。服を試着する時に意識してみてください。
今持っている服を大切に長く着るための工夫
次に、今持っている服を長く着るためのコツを紹介します。
●最も重要なのは、続けて着ないこと
服は数日連続して着用すると生地が傷みやすくなりますので、1度着たら2~3日は休ませるようにしましょう。長持ちをさせるためには、スーツやジャケットの場合、脱いだらまずブラッシングをしましょう。ポイントは、ブラッシング後すぐに仕舞わず、風通しのよいところに一晩干しておくことです。すると、繊維が呼吸して元の状態に戻ることができます。
ウール100%のセーターやニットも同様です。ただし、目立つ汚れがある場合は、すぐクリーニングに出すことをおすすめします。特に目立った汚れがない場合は、毎回洗濯をしなくてもOK。風通しの良いところで陰干ししておけば、ニオイもとることできます。
●洗濯したらすぐに干す
繊維が水分を含んでいると、ニオイが繊維にどんどん定着してしまうため、洗濯をしたらすぐに干しましょう。また、生地が濡れているとしわにもなるので、余計に寿命が短くなります。また、シミや食べこぼしをつけてしまったら、できるだけ早くクリーニングに出しましょう。
●きちんと下着やインナーを着る
下着やインナーを一枚着ることで服は長持ちします。肌に直接触れると、汗や皮脂が付いて、生地が傷む原因になります。
正しく保管して、大切な服を虫食いやカビから守る
お気に入りの服を長く着るためには、虫食い、カビなどに気を付けて、正しく保管することも大切です。特にウールやカシミヤ、シルクなどのやわらかい動物性繊維は虫に食べられやすいので、防虫剤を使って保管するのがおすすめです。「ムシューダ 引き出し・衣装ケース用」や「ムシューダ クローゼット用」なら、約1年間の防虫効果に加えて、防カビ剤を配合しているので、カビからも守ります。
服を手放すときのサステナブルなアイデア
大切に服をお手入れしていても、いつかはくたびれてしまったり、サイズが合わなくなるなど、どうしても処分しなければならない時が来ます。そんな時、捨ててしまうことに抵抗があるという人も多いでしょう。そこで、不要になった服を手放すときのサステナブルなアイデアを紹介します。
●不要な服が数点の場合
処分したい服が少なければ、フリマアプリを利用するのがよいでしょう。多くの人の目に触れて、求めている人に譲ることができる素晴らしいツールなので、ぜひ活用してみてください。 他にも、アパレルショップが設けている回収ボックスに出すという方法もあります。「服から服をつくる」リサイクルに取り組む「BRING™」では着なくなった服を回収し、ポリエステル繊維100%の衣服については服の原料に再生しています。回収ボックスは、この取り組みに賛同する百貨店やアパレル店など、さまざまな場所に設置されているのでチェックしてみてください。
●不要な服を大量(段ボール1箱分など)に処分したい場合
大量の服を店舗に持っていくのは手間もかかりますし、気が引けるという人もいるでしょう。その場合は、大量の服を簡単に送付できるサービスがおすすめです。
一般社団法人 日本リ・ファッション協会
日本リ・ファッション協会が行っている服の循環プロジェクト「リ・ファッション ラボ」 では、梱包資材を用意し、服をまとめて元払いで指定の住所に送ると、無料で受取ってくれます。回収した服を仕分けし、状態が良ければそのまま災害支援や母子家庭支援に使われます。一部はチャリティー販売されて活動資金に変わります。日本で古着として着ることができなければ海外へ寄付されます。そのどちらも難しい場合は、新たな服や小物の材料としてアップサイクルされるそうです。
古着deワクチン
申し込みを行うと、大きな紙袋の入った専用キットが届くため、そこに不要な衣類や服飾雑貨をたくさん詰めて着払いで送ることができます。 有料のサービスですが、紙袋には薄手の衣類が約100着入るため、特に大規模な断捨離におすすめです。回収した衣類などはカンボジアを中心に開発途上国で再利用され、さらに世界の子どもたちにポリオワクチンも寄付できる仕組みになっています。
●手放す前にリメイクという選択肢も
気に入って着ていたけど、年齢を重ねて似合わなくなったり、まだまだ着られるけど流行を過ぎてしまった服などは、リメイクという方法もあります。大切に受け継いできた着物などもワンピースやブラウスなど素敵に生まれ変わらせることができます。
取材協力:ファッションスタイリスト 長田広美さん
sfpj:https://www.sfpj.org/
Everlasting Style:https://estylec.com/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCDLqof8JBdE-dK-SZBHD3gA/videos