お気に入りの洋服を久しぶりに出したら穴があいていた――がっかりしてしまいますよね。衣替えで衣類をしまう際、中に衣類害虫がひそんでいると、しばらく服を取り出さない間に、虫食いの被害が一気に広がってしまいます。害虫を持ち込まないようにするのが、次のシーズンで落ち込まないための一番の対策です。
害虫が衣類を食べるのはなんと一年中!
虫が衣類を食べるのは、幼虫の時期。衣類害虫の中でも、産卵が年に1回の「カツオブシムシ」「ヒメマルカツオブシムシ」は、1年のうち約9カ月も幼虫として過ごします。また、蛾の仲間の「イガ」「コイガ」は年に3回も卵を産み、一生の約3分の2が幼虫期。ただし、生まれた時期によって長さが変化し、2~5カ月となります。
虫が活発になるのは、15度以上の暖かい季節。ただし、35度を超えるような猛暑では活動が鈍り、40度近くになると死んでしまいます。また、冬の寒い時期も苦手。とはいえ、エアコンなどで部屋の温度が一定に保たれていれば、虫にとっては一年中快適な環境。私たちの研究でも虫を一定温度の室内に置いて観察していると、季節にかかわらず一年中卵を産んでいることがわかります。
衣替えのタイミングで虫をシャットアウト
衣替えの時期は、春と秋の年2回という方が多いでしょう。虫食いが発生しにくい時期を選んで入れ替えられればベストですが、現実には難しいところ。そのため、衣替えのタイミングで、いかに虫を寄せ付けない環境をつくることがポイントです。
衣類についた食べこぼしや汗・皮脂汚れは虫のエサになるので、まずは、しまう前にクリーニングや洗濯をして汚れを取る「しまい洗い」が必須です。また、屋外に干した衣類に衣類害虫が付いている場合があるので、クローゼットなどにしまうときは、丁寧にブラッシングをして表面にいる虫や卵を落としましょう。
さらに、衣類をしまう時に防虫剤を一緒に入れておけば、収納中の虫食い被害はさらに抑えらます。防虫剤は、収納空間の広さなどに応じてさまざまな種類がありますので、ご自宅にあったものをお使いください。防虫剤の選び方は、「防虫対策総まとめ~虫食いの原因から防虫剤選びのポイントまで~」を参考にしてください。
衣替えは乾燥した日を選ぶのもポイント。湿度が高くてジメジメしていると、虫が活発になります。
衣替え以外で注意するポイント
衣類害虫は、パッと見ていないようでも隠れている可能性があります。幼虫期は「負の走光性」といって光から離れる性質があります。そのため幼虫は、クローゼットや衣装ケースの奥など、暗い場所に集まっていきます。逆に、羽化して一定時期を過ぎた成虫は「正の走光性(光に集まる性質)」を有するため、外を飛び回っている成虫は、屋外に干している白い洗濯物や服に寄ってきて、室内に取り込んでしまうのです。クローゼットには、普段着ている服も一緒になっている場合が多いので、屋外からの侵入にも注意しましょう。
また、タンスやクローゼットなどは、虫が住みにくい環境にしておくことが大切です。虫は60〜80%前後の高い湿度が好みなので、定期的に扉を開けて乾燥を。合わせて、虫のエサとなるホコリや汚れも掃除してしまいます。
イガ類は発生サイクルが短く、幼虫期はとても多くの繊維を食べます。「先月着たばかりの礼服を今月も出したら穴があいていた」ということもあります。
礼服など不定期で着る服もクリーニングしてからしまうのが理想ですが、できない場合は、しまう前にパタパタとはたいたり、ブラッシングをして少しでも虫食いのリスクを減らしましょう。