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花粉ダブルパンチがやってくる!花粉症の再発と子どもの発症&重症化に専門家が警鐘!

花粉の飛散状況と人の行動、ともに近年と異なる状況が予測される2023年の花粉シーズン。アレルギー専門医の永倉仁史先生と環境学者で花粉原因物質研究の専門家の王青躍先生に、特に注意するべきリスクを取材、さらに有効な対策をまとめました。

参考:ニューノーマル花粉対策ガイド2023

2023年花粉シーズンのトレンド

2023年の花粉は例年と何が違うのか? 環境としては次の2つの要因が挙げられます。

10年に一度の花粉大飛散

環境省は2022年末に、スギ花粉の飛散量が一部地域では「過去10年間で最大」になる可能性を発表しました。民間各社からは昨年比2倍を超えるとの予報も出されています。


令和4年度スギ雄花花芽調査の結果について

日本気象協会 2023年 春の花粉飛散予測(第3報)

第三回ウェザーニューズ花粉飛散傾向

3年ぶりの行動制限なしの花粉シーズン

2021〜22年は、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が一部で適用されました。花粉がピークとなる今年の2〜3月は、政府や自治体による行動制限は行われない見込み。仕事、プライベートで外出機会が増加することが予測されます。

花粉症の再発・重症化、新規発症が増える!

例年にない大量の花粉と、これまで控えられてきた外出が増えるという状況に対し、専門家の2人は次のような警鐘を鳴らします。

重くなって返ってくる花粉症に要注意

「コロナ禍が始まった2020年春以来、花粉症を理由に来院する患者さんは激減しました。感染の懸念から通院自体が敬遠されたこと、そして、外出控えやマスク着用の徹底で、症状自体が軽くなったり、なくなったことが原因と考えられます。
特に子どもの患者数は大幅に減り、大人でもこの数年は症状が落ち着いていたという重症患者が多く見受け
られました。エステーの調査でも、花粉症を自覚する人のおよそ3割が、コロナ禍で症状が軽くなったと回答しています(「ニューノーマル花粉対策ガイド2023」P.4参照)。
しかし、花粉症が自然に治るのは珍しいケース。2023年は改善したと思っていた花粉症が再発して、以前より重症化する患者さんが多いと予測できます。例年以上に体調変化に注意して、迅速に対策してください。」

永倉仁史先生
ながくら耳鼻喉咽科アレルギークリニック院長。アレルギー専門医。NPO花粉情報協会理事

お子さんの花粉症に例年以上の気遣いを

「2000年代には東京都で3人に1人ほどだった花粉症の有病率は、今では2人に1人にまで増加し、今後も増えていくことが予想されます(※)。なかでも、子どもの花粉症患者の増加は顕著です。
花粉に関しては、子どもは大人より、リスクにさらされる可能性が高いと言えます。花粉は都市部舗装道路
などの地面に落ちた後にも再飛散したり、家の中でも床やカーペットに積ったりします。背の低い子どもは、花粉とそのアレルゲン微粒子を吸い込みやすい環境にあるのです。
小さいうちは症状を上手に訴えることができませんし、初めてのことならなおさらです。2023年の花粉シーズンにおいては、花粉症の可能性を考慮に入れ、常に子どもの目線で気遣ってあげてほしいと考えています。」

王青躍先生
埼玉大学大学院理工学研究科教授・工学博士。環境科学研究者

※東京都福祉保健局 花粉症患者実態調査(平成28年度) 概要版

2023年花粉対策の重点ポイント3選

これまで、エステーのくらしにプラスでも、たくさんの花粉対策を紹介してきました。2023年のシーズンで、特に重要な3つに絞ってポイントをお伝えします。

マスクなど基本対策がより重要に!

最も有効な対策は、花粉とそのアレルゲン微粒子を体の中に入れないこと。コロナ対策の見直しで脱マスク
が話題になりますが、花粉症の方は、引き続きマスク着用を忘れずに。
マスクをしている分、涙や目のかゆみといった症状が気になる方もいます。花粉対策メガネを付けて、目に
入れない対策を検討しましょう。

予防、対策はとにかく早めに!

花粉の量が多い2023年は、症状が重くなってから対策しても手遅れの可能性があります。早ければ2月上旬から花粉が飛散するので、それ以前に異変を感じたら薬を服用するなど、対策しましょう。例年はマスクや市販薬でしのいでいる方も、今年は念の為、医師の診察を受けるのが得策かもしれません。

家ナカ花粉の対策を万全に!

花粉は身体や衣類についたり、換気などによって、家の中にも入ってきます。屋外の飛散量が多いほど、家ナカ花粉とそのアレルゲン微粒子も増えます。自分の家ではマスクを外すので、よりダイレクトに花粉とそのアレルゲン微粒子にさらされます。特に以下のような家ナカ花粉対策の基本を徹底しましょう。

花粉を室内に入れない

上着などに付着した花粉は家に入る前にブラシやテープで取り除いたり、玄関で脱ぐなどの対策を。換気の際はレースのカーテンを使用しましょう。

花粉を舞い上げない掃除

掃除機は花粉を舞い上げるので、カーペットは粘着テープ、フローリングは水拭きするなど、まずは花粉などを取り除き、空気清浄機を適切に設置しましょう。

加湿して鼻・喉を保護

粘膜の表面が乾燥すると、傷ついて花粉を取り込みやすくなります。家ナカ花粉を取り除いた上で、加湿器を使うなどして、適度な湿度を保つ工夫を。

まとめ

エステーが2023年1月に行った調査では、約4割の花粉症の方が「昨年と比べて外出機会が増える」意向であることがわかっています。また、大人では約3割、子どもでは約4割が「マスクが外す機会が増加」しています。徐々にコロナ禍以前の生活を取り戻しつつある中、花粉との関係も改めて見直して、ニューノーマルの花粉対策を実践しましょう。

プロフィール

永倉仁史先生

ながくら耳鼻喉咽科アレルギークリニック院長。アレルギー専門医。NPO花粉情報協会理事。1982年、東京慈恵会医科大学卒業。1985年、東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科アレルギー外来担当となり、鼻アレルギーの治療および減感作療法を専門とする。国立成育医療研究センター(当時、国立小児病院)免疫アレルギー研究部にてアレルギー治療について研究。平成2年より、東京厚生年金病院耳鼻咽喉科勤務、その後、東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科助手。平成7年より文部科学省(当時、文部省)委託「スギ花粉症克服に向けた総合研究」に参加し、スギ・ヒノキ花粉症に対する疫学的調査・基礎・臨床応用の研究に協力し、全国でスギ・ヒノキ花粉症の調査にあたる。

王青躍先生

埼玉大学大学院理工学研究科教授・工学博士。環境科学研究者。
都市大気汚染計測、対策技術、再生可能なエネルギーの研究と同時に、近年、都市部木本類と草本類の花粉とそれらのアレルゲン物質の飛散挙動、PM2.5などの大気汚染による花粉症への増悪、花粉症や大気汚染対策について、NHK総合テレビの「おはよう日本」をはじめ、近年130回以上のテレビ番組等に出演・解説。そのほか、The Japan Timesなどの新聞・雑誌でも研究成果が数多く紹介されている。科研費新学術領域研究や多数の基盤研究(B)代表者、東京都花粉症対策検討委員会委員の歴任、Journal of Hazardous Materials、Environmental Pollution、Environmental Science and Pollution Research、Atmospheric Environmentなどの著名国際誌での学術論文も150編以上掲載。

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