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春の花粉に悩む人は「隠れ秋花粉症」かも⁉ コロナ禍で注意するべき秋花粉症のリスクとは

コロナ禍で私たちの生活は大きく変化しています。秋花粉に対しても、今だからいっそう強く注意するべき理由があります。ひとつは、隠れ秋花粉症のリスクが年々高まっているという長期トレンド、もうひとつは新型コロナの流行によるニューノーマルの生活環境です。 花粉研究の第一人者、埼玉大学大学院理工学研究科教授の王青躍先生と、感染症に詳しいナビタスクリニック理事長の久住英二先生に話をお聞きしました。

今、秋花粉に注目するべき7つの理由

増え続けるスギ花粉症患者、高確率で秋花粉にも反応

王先生の解析によると、タンパク質遺伝子アミノ酸配列の類似性から、理論上、スギ花粉症の患者の40%~70%程度がブタクサ花粉症になる可能性があるそうです(※)スギ花粉症の有病率は増加傾向にあるため、雑草の花粉症も増えていると推定できます。反対に、秋に雑草の花粉を大量に吸うことで、樹木の花粉症を引き起こす可能性も否定できません。
(※)地域差や免疫力の個人差があります。

※一部の文章に不適切な表現がありましたので修正しました。(22年8月1日)

地球温暖化によって雑草が元気に

近年の地球温暖化は秋花粉にも大きな影響をもたらしています。暖かい気候は雑草の生育に好条件であり、イネ科の植物やブタクサ、ヨモギといった植物が生命力を強めています。王先生によれば、明らかに地球温暖化が秋花粉飛散量の増加につながっているとか。

建物の高層化で都市の緑地が増えている

面積が一定規模以上の敷地に公開空地(周辺住民や通行人なども利用できるオープンスペース)を設けると、ビルやマンションの高さ制限などが緩和されます。都市ではビルの高層化が進み、公開空地が緑地に利用されるケースが増えています。生命力の強い雑草が根を張り、都市でも花粉を撒き散らしています。

水害などで種が運ばれ雑草の生息地が拡大

台風の水害などにより、河川敷が浸水するような光景を見る機会が増えました。増水した川は上流から植物の種を運びます。秋に花粉を飛ばす、たくましいヨモギやブタクサが、河川敷などで勢力を増しています。

散歩が増えると吸い込む花粉も増える

リモートワークの合間に、散歩や運動などに行く機会が増えたという方も多いのではないでしょうか。公園や河川敷は、秋の花粉を飛ばす雑草が、たくさん生育しています。きれいな空気を吸ってリフレッシュしているつもりが、花粉を大量に吸い込んでいる可能性があります。

花粉症を意識せず目をかくなど感染リスク

新型コロナウイルスが付着した手で、目や鼻などの粘膜に触れると、感染の原因になります。秋の花粉症を意識し、しっかり対策していないと、思わずかゆい目をこすってしまうリスクがあります。

秋花粉の体調不良が一部コロナの症状と重なる

新型コロナウイルスの流行が予断を許さない状況の中、秋の花粉症にもあるせきや倦怠感といった不調を感じたら、まずは他人との接触を避けるべきです。仕事や家族の生活に支障をきたさないためにも、秋花粉の対策は万全にしておく必要があります。

秋花粉??と思ったら…

こうしたコロナ禍での秋花粉リスクに対して、どのようなことに注意すればよいのでしょうか?

「春の花粉症に比べて、秋の花粉症は一般にあまり知られていません。毎年同じような時期になると不調を感じるようなら、花粉症の疑いがあります」と久住先生。

症状は、鼻水や目のかゆみ、咳やくしゃみなど、春の花粉症と同様です。ただ、スギやヒノキと比べて、イネ科やブタクサの花粉は、少しマイルドに症状が出る傾向がある、といいます。

さらに、「今年は新型コロナウイルスが流行しており、いつもとは違った注意が必要」と指摘します。
37.5度以上の熱が、外出を控えたり、検査を受ける基準と考えられる向きはありますが、ほんの少しだるかったり、せきが出るだけでも、感染を疑わなければならない状況です。

軽症や無症状の感染者が、それと気づかず感染を広げていることは周知のとおり。今年に関しては、「秋花粉かな?」と思うような軽い症状でも、会社への出勤や家族での外出は控え、必要に応じて検査を受けるのが賢明です。

ニューノーマルの生活の中では、秋花粉が仕事やプライベートに、思わぬ支障をきたす可能性があります。例年ならさほど気にしない方でも、振り返って花粉症の症状があるようなら、事前に万全の対策をとっておくことをおすすめします。

まとめ

見逃されがちな秋の花粉症ですが、実は多くの人に関わる問題。春と同じように、注目される日も遠くないのかもしれません。
特にコロナの症状と、見分けが付きづらいのはやっかいなところ。正しい知識を持って、ニューノーマルの秋花粉シーズンを乗り切りましょう。

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プロフィール

王青躍先生
埼玉大学大学院理工学研究科教授・工学博士。環境科学研究者。都市大気汚染計測、対策技術、再生可能なエネルギーの研究と同時に、近年、都市部木本類と草本類花粉とそのアレルゲン物質の飛散挙動、PM2.5などの大気汚染による花粉症への増悪、花粉症や大気汚染対策について、NHK総合テレビの「おはよう日本」をはじめ、八十数件のテレビ番組等に出演・解説。ほか、新聞・雑誌でも研究結果が数多く取り上げられている。特に、東京都花粉症対策検討委員会委員の歴任、Environmental Pollution、Environmental Science and Pollution Research、Atmospheric Environmentなどの著名国際誌での学術論文も多数掲載
久住英二先生
医療法人社団鉄医会(ナビタスクリニック)理事長。内科認定医、血液専門医、Certificate in Travel Health, the International Society of Travel Medicine
新潟大学を1999年に卒業後、虎の門病院で血液内科医として骨髄移植や臍帯血移植の臨床研究に従事。のち東大医科研・探索医療ヒューマンネットワークシステム部門にて医療ガバナンスに関する研究を開始。2008年、都市で忙しく働く人々=現代の医療弱者に医療を提供する目的で、駅ナカ立地で21時まで開いている診療所を立川駅に開設。現在は新宿駅と川崎駅にも開設し、診療にあたる。病気について正しい知識を持ってもらうことが大事と考え、各種メディアで血液がん、感染症、ワクチンについて解説している。

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