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在宅勤務中の「ながら介護」をはじめた方に〜自分も大事にする在宅介護6つのポイント〜

コロナ禍を経て、自宅でリモートワークをするスタイルが定着しました。この変化とともに、明らかになったのが、在宅勤務と在宅介護を両立する「ながら介護」の問題です。

エステーが2022年10月に行った調査では、在宅介護者の約半数が、在宅勤務中の「ながら介護」を行っていることが判明し、さらに、コロナ禍での在宅介護の悩みとして、「在宅時間の増加」や「自分の時間がない」ことでの“介護ストレス”や“体力的負担”が増えている実態が分かりました。

生活スタイルが大きく変わる中、介護者には自分自身のケアも大切にしてほしい! そんな思いから、介護ジャーナリストの小山朝子さん監修の下、「ながら介護」のポイントをまとめました。

1.困っていることを明確にする

仕事で大きな問題に直面したとき、課題を分解していく作業が重要。「ながら介護」でも同じことが言えます。

慣れない介護の大変さに漠然と頭を抱えてしまうことはあるでしょう。けれど、落ち着いて具体的に何に困っているか、明確にしていくと、対策を考えることができます。小山さんのおすすめは、メモ程度でよいのでアウトプットすること。言葉にして考えを整理することの効果をビジネスパーソンであれば実感しているはずです。一日を振り返って簡単に書き出し、明日はこうしてみようなどと考えてみるとよいでしょう。

2.自分のための時間をとる

自宅でのリモートワークのなかで、気持ちを切り替える難しさを実感している方は多いでしょう。

「ながら介護」で直面する大きな問題は、仕事の時間と介護の時間の線引きが曖昧になってしまうことです。自宅で仕事をしていても、常に要介護者のことが気になっている状態で、仕事に集中するのもなかなか難しいでしょう。小山さんは、「介護と仕事の両方から離れた時間をつくることが大事」と指摘します。

「例えば、美味しいコーヒーを飲んだり、好きな音楽を聴いたりと、ちょっとしたリフレッシュの時間を持つとよいでしょう」と、自身の経験も踏まえてアドバイスします。

3.シチュエーションに合わせてアイテムを賢く活用

介護の負担を軽減するためにおすすめなのがアイテムの活用です。使用するシチュエーションに合わせて選ぶことが大切だと小山さんは言います。

例えば、排せつの心配があったり車いすでの生活の場合、家にこもりがちになりますが、思い切って外出の機会をつくってみると、家族も要介護者も気分転換ができるかもしれません。「外出時には、おむつのほか、使用済みおむつを持ち帰るビニール袋や、袋に入れて手軽に使える脱臭シートなどを準備しておくと安心です」(小山さん)。

また、要介護者ができることはできるだけ自分でやってもらうことが大切です。「優しい嫁さん、寝たきりつくるという言葉があります。過剰な介護をすることで身体能力が低下することが指摘されているのです」。小山さんは、握力が弱くても使いやすい箸や、すべりにくく片手で持ちやすい器など、自立をサポートするアイテムの活用もすすめています。

4.家にこもらず距離を置くことも大切

仕事をしながら、ひとつ屋根の下で要介護者とずっと一緒にいることはストレスになりえます。これまで、オフィスや外回りで、バリバリ仕事をしてきた方ならなおさらでしょう。家にこもりきりになって長時間一緒に過ごしていると、互いの言動が気になり、口喧嘩が増えるなどトラブルが起きやすくなることもあります。

「例えば、ヘルパーさんが来ている時間は散歩や買い物に出かけるなど、意図的に距離を取る工夫をしてはどうでしょう」と小山さん。

5.相談先を複数持っておく

介護の悩みは、知人や友人、場合によっては家族にも、わかってもらえないことがあります。抱え込んでしまう人が多いようですが、具体的な困り事の相談はもちろん、ただのグチでも吐き出す場を持っておくことが大切です。

ケアマネジャーやヘルパーは、良き相談相手になってくれるでしょう。さらに小山さんは、「頼れる場がたくさんあることが大切」と言います。地域や医療機関が運営するコミュニティもありますし、ネットも活用できます。

親しい関係の人にしか相談できないこともあれば、身近な人には話しにくいようなこともあるでしょう。節度を守った上で、匿名でグチを言い合えるような場も、持っておくとよいのかもしれません。

6.目に見えないストレスになるニオイをケア

「ながら介護」では、食事や排せつ、着替えや入浴の手伝いなど、日々のケアだけでも精一杯になるほどの忙しさとなります。そのような中で、「後回しになりがち」と小山さんが指摘するのが、目には見えない「ニオイ」の問題です。

要介護者の尊厳にも関わるデリケートな問題とも言えるでしょう。 しかし、放置していると自分にも要介護者にも、ストレスが重なっていきます。介護現場のニオイは「複合臭」といって色々なニオイが混ざり合っているので原因の特定が難しい場合があります。また、一般の消臭剤を使うと、消臭剤の香りと介護によって発生するニオイが混ざり合ってより不快になったり、十分な消臭効果を得られないこともあるため、「介護専用」の消臭剤を使って効率よく対策しましょう。

参考:介護している部屋の特有のにおいに悩んでいます。原因と対策を教えてください

介護専用のゴミ箱用消臭剤でおむつのニオイ対策

使用済みのおむつのニオイが気になる時は「消臭力 エールズ おむつゴミ箱用」を。“介護専用”に特化したリキッドタイプの消臭剤で、使用済みのおむつや尿取りパッドを捨てるゴミ箱から漏れる尿臭や便臭のニオイをしっかり消臭します。

まとめ

小山さんの「ながら介護」へのアドバイスからわかるのは、仕事と介護は双方ともに「課題を明確にする」、「一人で抱え込まない」など、共通する重要なポイントがあるということです。

とはいえ、介護は仕事と同じようにうまくいかないこともあるでしょう。失敗したり、要介護者と口論したり、そのことで自分を責めるときもあるかもしれません。そんなとき、「『自分や相手が悪いわけではない。老いや病気が、そうさせている』と考えると気が楽になりました」と、小山さんは自身の介護体験を振り返ります。

ひとりで抱え込まず、人やモノをうまく頼って賢く介護する――。小山さんのアドバイスを「ながら介護」の参考にしてみてはいかがでしょうか。

小山朝子さんプロフィール

介護ジャーナリスト、介護福祉士、福祉用具専門相談員。 約10年にわたる祖母の在宅介護でニオイの悩みを経験。講演、執筆のほか数々の番組にコメンテーターとして出演。『世の中への扉 介護というお仕事』(講談社)ほか著書多数。

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