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コロナ禍の不安や不満を解消し、オフィスの空気をかえよう。人間関係をよくする心のテクニック

コロナ禍も1年を越えて、オフィスの環境は大きく様変わりしました。今までになかった不安やストレスを感じながら、職場のギスギスした雰囲気が気になったことのある方は多いでしょう。そんなオフィスの空気をかえ、人間関係をよくするコツを、日本産業カウンセラー協会会長の田中節子さんにお話を聞きました。

コロナ禍のオフィスで起こっていること

オフィスワーカーの心や人間関係には、どんな変化が起こっているのでしょうか? 田中さんは、次の4点を指摘します。

多様性を受け入れられなくなっている

オフィスは本来、多様な人々が集まる場所であり、人を思いやりながらバランスをとってきました。

しかし、出口のみえない緊張が続くと、人は自分の考えに固執し、柔軟な考え方や行動ができなくなります。人による違いが顕在化し、溝が深まると同時に、自分と違う行動が許せなくなります。
感染によるリスクも、ガマンのストレス耐性も十人十色ですが、それが受け入れられません。すると、「衛生対策がゆるい」と人を批判したり、反対に「神経質すぎる」と揶揄したり…。言動にこそ表れなくても、人と人の距離が広がり、職場の空気はギスギスしてくるのです。

適切な自己主張ができなくなる

「アサーション」では、コミュニケーションを「アグレッシブ(攻撃的)」「ノンアサーティブ(非主張的)」「アサーティブ(適切な自己表現)」の3つに分ける考え方です。

「アグレッシブ」は、相手の立場を考えない一方的な自己主張を言います。「ノンアサーティブ」は自分を押し殺して相手に合わせる態度。「アサーティブ」は、相手の立場を尊重した自己主張の方法です。

感染への不安が大きいと「アグレッシブ」な態度をとりがちです。「〇〇警察」のような現象は、最たる例でしょう。オフィスではそこまで極端ではないと思いますが、正論を押し付けると相手は反論できず、感情的なしこりが残ります。
価値観の違いが顕著になるなかで、「ノンアサーティブ」な人も増えているはずです。彼らは周囲の衛生対策に不安を感じても、表に出さないため問題解決できません。そればかりか、自分の中で考え込んで、相手へのネガティブな感情をどんどん大きくしてしまいます。

今こそ「アサーティブ」なコミュニケーションを心がけたいところ。考え方の異なる間柄でも、「話せばわかる」ケースは多いものです。

日々のネガティブ情報が空気を悪くする

気分の良いときは物事の良い面が、悪い時は物事の悪い面が見えやすくなる…。「気分一致効果」という、心理学の理論です。

変異株、身近な感染者、経営状況の悪化など、私たちは毎日のようにネガティブな情報を受け取っています。あまりに続くと、気持ちも沈んできます。すると、思い通りにいかないプロジェクトの進行、上司や同僚の言動に対する小さな違和感など、あらゆる物事の悪い面ばかりがみえてきます。

自分の感情を、事実としてストレートに受け取ってはいけません。「気分一致効果」がうむギャップがあるのです。

「ストローク」が減っている

人は誰かに承認されたい、存在を認知してほしい、という欲求を持っています。そんな欲求を満たすのが「ストローク」です。心理学用語で「他の人の存在を認めるための行動や働きかけ」を言います。

コロナ禍で、オフィスのストロークは減っています。たとえばソーシャルディスタンスの確保が求められる中、肩を組んで仲間意識を示したり、背中を押して励ますような行為は、難しくなっています。
マスクを着けているので、表情で相手への好意を伝えることも難しくなりました。そもそも、リモートワークが進み、顔を合わせること自体がなくなっているかもしれません。

オフィスの空気をかえる7つのポイント

コロナ禍での不安やストレスを解消し、オフィスの空気をよくするポイントを整理しましょう。

1.感情が偏っていることを自覚する

コロナ禍というこれまでに経験のない状況で不安になったり、他人の価値観を受け入れられないのは当然のこと。人間は集団の規範に沿わない人を排除することで、命を守ってきた側面があります。不安や恐怖が高まると「自分と違う人は攻撃しても良い」と考えたくなる性があるのです。
感情的になりかけたら、そうした性質が自分にも相手にもあると、思い出してください。感情の偏りを正して、相手の立場を思いやったり、主張に耳を傾けられるようになれるはずです。

2.リモートワークなどの社内格差に目を向ける

コロナではたらく環境が変わり、社内でも今までにない格差ができてしまいました。
わかりやすいのがリモートワークの可否。部署や業務によって、リモートワークできる人と、出社しなければならない人がでてきます。出社すると、他部署の電話をとったり、書類を処理したりと、余計な仕事が増える可能性があります。
偏った負担を放置せず対策ができるよう、みんなで社内格差に注意しましょう。不満がある場合は、ためこむ前に相談を。

3.自分の事情を伝えることが相手を尊重することになる

「アサーティブ」に自己主張するコツは、他人から見えにくい自分の事情や感情を、ストレートに伝えること。
対策が不十分な人に対して、「ちゃんと対策して!」と主張だけ伝えるのは、相手を尊重した態度とは言えません。「自宅に高齢の母がいて心配なので、対策してほしい」といえば、相手も理解してくれるでしょう。

4.ポジティブ情報を周りに発信する

悪い状況のときほど、「気分一致効果」でオフィスの空気は沈みがちです。しかし、コロナ禍でも気分まで暗くなる必要はありません。
ここは「気分一致効果」を逆に利用して、意識的にポジティブな情報を発信し、みんなを明るい気持ちに導いてはどうでしょう。人のために良いことをすると、自分自身が一番幸せを感じられます。

5.ワクチンハラスメントに注意!

今後、現役世代へのワクチン接種が進めば、「ワクチン打った?」といった会話がオフィスで交わされるようになるでしょう。
ワクチン接種は個人の自由です。人それぞれ事情があり、接種しないという人がいても、その判断が悪いわけではありません。オフィスの多様性を思い起こして、ワクチンハラスメントのような現象が起こらないよう、みんなで気をつけましょう。

6.何気ない雑談を大切に

人間関係を良好に保つうえで、「ストローク」は欠かせないものです。オフィスでのスキンシップや、顔を合わせたコミュニケーションができなければ、代わりに同僚や部下へこまめに声をかけるなどして「ストローク」の機会を増やしましょう。目的のない雑談が減っている今、それがどんなに貴重だったか、実感している方は多いはずです。

7.マスクの下はいつも以上の笑顔で

笑顔はもっとも簡単にできる「ストローク」。マスクを着けていると顔の下半分が隠れてしまいますが、マスク越しでも、声だけでも笑顔は伝わります。思いきり大きな笑顔で、相手の承認欲求を満たしてあげましょう。
また、口角を上げるだけで、脳は幸せだと感じます。笑顔は自分の気持を明るくする「心のストレッチ」でもあるのです。

傾聴型のコミュニケーションを

危機感が高まっているときは、人は団結してルールを守ることができました。しかし、緊張した生活がここまで長引き、ワクチン接種が進むなど出口がみえてくると、集団より個人の意志を優先させる人も増えてきます。もちろん、集団のルールに強くこだわる人もいます。
コロナ禍で顕著になった違いは、ますます大きくなるでしょう。今こそ1人ひとりが互いの考えに耳を傾け、多様性豊かなオフィスを取り戻すことが大切です。

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「ニューノーマル第2章 オフィスの衛生対策はルールから思いやりへ」

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「ニューノーマル第2章の衛生対策 オフィスの思いやり」

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田中節子さんプロフィール

日本産業カウンセラー協会会長
長年にわたり、南海放送のテレビ・ラジオの番組制作・出演に携わる。心の支援者としての活動は、学校・企業などで「シニア産業カウンセラー」「キャリアコンサルタント」として心の健康づくりのサポート、コミュニケーション能力アップの指導、管理職向けの研修のほか、個別カウンセリングにも応じている。共著に「産業カウンセラーの目」 ((社)全国労働基準関係団体連合会)、「60歳からのルネッサンス」(学芸社)など。

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