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秋の花粉症の基本〜ブタクサ・ヨモギなど雑草が花粉を飛ばす? 春の花粉との違いとは?〜

国や医師は特に注意喚起しない、メディアも報道しない、自分自身でさえ気づいていないかもしれない…。けれど、環境の変化や新型コロナウイルスの影響から、今さまざまなリスクが顕在化しているのが秋の花粉症。春に花粉症に悩まされている、毎年秋になると体調が崩れる、という方は必見です。

雑草の花粉がアレルギーの原因に

花粉症の原因としては、春に多く飛散するスギ・ヒノキが思い浮かびますが、花粉はあらゆる植物が、あらゆる季節に飛ばしています。
秋の花粉症はスギ・ヒノキのような樹木=木本類ではなく、多くのイネ科やブタクサなど草本類=雑草の花粉が主な原因です。日本での注目度は低いですが、大規模な草原が広がるヨーロッパや北米においては、雑草の花粉症がすでに大きな社会問題となっています。

春の花粉症に悩む人は隠れ秋花粉症にも注意を!

埼玉大学の王青躍先生は、スギ花粉とブタクサ花粉では、アレルギーの原因物質となるタンパク質の構造がよく似ており、樹木の花粉症を持っている人は、雑草の花粉にも反応する可能性があると指摘します。
王先生の解析によると、タンパク質遺伝子アミノ酸配列の類似性から、理論上、スギ花粉症の患者の40%~70%程度がブタクサ花粉症になる可能性があるそうです(※)。
毎年秋季に不調を感じる人は、雑草の花粉症を発症していることも考えられます。
(※)地域差や免疫力の個人差があります。

※一部の図や文章に不適切な表現がありましたので修正しました。(22年8月1日)

秋花粉は不規則で予測が難しい(春花粉との違いとは?)

秋花粉は、飛散状況が毎日報じられるなど話題になることはほとんどありません。あまり注目されていないのは、次のように春花粉との違いがあるからです。

まず、雑草の花粉は、背の高いスギやヒノキのように数百kmも遠くまで飛びません。飛散距離は、通常数kmから長くても数十kmの範囲で、同じ市内でも場所により飛散量はかなり異なります。例えば、雑草の多い河川敷や公園の近くには、たくさんの花粉が舞います。しかし、2〜3km離れた商業地域では花粉が少ないという状況がふつうです。

また、人間の活動が大きく影響するのが、秋花粉の特徴。例えば、草刈りをすると、振り落とされた大量の花粉が舞い上がります。

日本の草地はヨーロッパほど広くないので、1週間程度で花粉の飛散は収まります。春のようにつらい症状に何カ月も苦しむことが少ないので、なかなか花粉症が疑われません。
日本では雑草の生育地があちこちに点在し、それぞれに生育状況が異なり、また草刈りも不規則に行われます。短い波が何度もやってくるのが、秋花粉の特徴です。症状は短くても、毎年不調を感じる人が少なくありません。

雑草の花粉はデータを取ることが大変難しいので、国はスギ花粉や黄砂、PM2.5のようなモニタリングを行っていません。研究もあまり進んでおらず、注意喚起や治療につながっていないのが実情です。現在、王青躍先生の研究室では毎年調査し続けており、秋花粉の飛散情報が発信されています。

1年中が花粉シーズン

雑草の花粉は種類が多く、それらの予測が難しいのは前述の通りですが、大まかなシーズンを知り、秋花粉への対策を備えておくことは重要です。

キク科のブタクサ、ヨモギ、セイタカアワダチソウなどは、7月上旬から飛散が始まります。8月下旬から9月にかけては、特にブタクサが活発になり、河川敷などの草刈りも重なるので、特に注意してください。カナムグラはアサ科のつる草で、ブタクサよりやや遅れて9月中旬〜10月上旬に飛散量が増えます。イネ科は初夏にピークを迎えますが、10月まで息長く飛散します。

これらの雑草は生命力が強く、河川敷や公園、家庭の庭や道路の脇などの緑地、至るところに生育します。
また、一部のスギ花粉が10月にはじまっている点も要チェック。2~3月に十分成長できなかったスギ花粉が、雄花の中に残り、「熟成」して秋にも飛散してしまいます。

まとめ

秋の花粉症への対策は、基本的には春と変わりません。マスクを基本に、花粉防止メガネやスプレーなど、一般的な花粉対策グッズが役立ちます。リモートワークが多い方は、自宅の家ナカ花粉にもご注意ください。

参考:花粉シーズンは家にいても花粉が気になります。自宅で快適に過ごすための効果的な花粉対策を教えてください。

秋の不調に心当たりがあるなら、いちど医師の診断を受けるのもおすすめです。花粉症である場合、何の花粉に反応しているかも検査でわかります。

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プロフィール

王青躍先生
埼玉大学大学院理工学研究科教授・工学博士。環境科学研究者。都市大気汚染計測、対策技術、再生可能なエネルギーの研究と同時に、近年、都市部木本類と草本類花粉とそのアレルゲン物質の飛散挙動、PM2.5などの大気汚染による花粉症への増悪、花粉症や大気汚染対策について、NHK総合テレビの「おはよう日本」をはじめ、八十数件のテレビ番組等に出演・解説。ほか、新聞・雑誌でも研究結果が数多く取り上げられている。特に、東京都花粉症対策検討委員会委員の歴任、Environmental Pollution、Environmental Science and Pollution Research、Atmospheric Environmentなどの著名国際誌での学術論文も多数掲載

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