季節のくらし

子どもの「段取り力」「考える力」を伸ばす お手伝いのすすめ

1.お手伝いはどうして必要?

「お手伝いはあらゆる子どもの問題を解決できると思うんです!」と言う家事セラピストの粂井優子さん。文部科学省の統計資料でも、お手伝いを多くしている子どもの方が道徳観や正義感があるという結果が出ているそう(2012年「青少年の体験活動等と自立に関する実態調査」より)。お手伝いがなぜ大切なのか? 粂井さんにお伺いしました。
粂井優子さん
1級家事セラピスト
粂井優子さん
プロフィール
粂井優子さん

プロフィール

1級家事セラピスト
粂井優子さん
1級家事セラピスト、整理収納アドバイザー。社会人、大学生、高校生男女3人の母。独立行政法人で役員秘書として勤務。退職後、不登校児を預かり暮らした経験から、心理学を学ぶ。2012年より共同主宰している「親を楽しむサロン」のほか、「暮らし、夫婦、子ども、仕事、こころ みんなに笑顔を」をキャッチフレーズに、家事・子育てに関する各種講演、講座、ワークショップ、企業研修を全国各地で開催。講師・プランナーグループ「Home to Work」代表。オフィシャルブログはこちら
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子どもが感謝される貴重な場

お手伝いとは、その名の通り人を助ける行為です。親が子どもに感謝をする、貴重な機会。「ありがとう」「助かるよ」と言ってもらうことで、自尊感情が高まると言えるでしょう。
お手伝い以外で、子どもが日常的に家族から「ありがとう」を言われることはなかなかないのではないでしょうか。
勉強では、褒められることがあっても「ありがとう」はなかなかありません。
お手伝いをしてもらうことで、親が子どもに感謝の気持ちを伝えるよい機会を作れるのです。

子どもにたくさんの力が身に付く

お手伝いにはさまざまな種類があります。
毎日お手伝いを続けることで、忍耐力が養われるでしょう。また、時間を工面したり、効率のよいやり方を考えたりする思考力、待ち時間に別のことをするというダンドリ力などが付きます。
失敗してもまたやるという逆境力や、任せることによる責任感なども。さらには、家族を思う思いやりの心も身につきます。
家事にはさまざまな要素が詰まっており、それを手伝ってもらうことで子どもに大きな力をつけてあげることができるのです。

お手伝いしながら親子のコミュニケーションが生まれる

面とむかってはなかなか口を開かない子どもも、一緒に家事をするとぽつりぽつりと話をしてくれることがあります。洗濯物を畳みながら、野菜を切りながら、「学校でこんなことがあってね」と話し始めるそう。
確かに自らを振り返っても、作業をしているときの方が話しやすい感情はわかるのではないでしょうか。

「ダメ出し」はアウト!

お手伝いをしてもらったら、気をつけたいのは声がけです。つい「ダメ出し」をしたくなりますが、「ダメ出しはしない」を原則にしましょう。
まず満面の笑みで「ありがとう」「とても助かった」と伝えましょう。足りないところがあっても、基本的には目をつむります。子どもが自分で改善していけるからです。
どうしても「直して欲しい」ということがある場合は、感謝の気持ちを伝えた後に「次からはこうしてね」と伝えるとよいでしょう。

2.日常のお手伝いはルールを決めて

お手伝いには、日常的なものと、大掃除のように日常的ではないものがあります。日常的なお手伝いは、できるだけルール(分担)を決めるとよいでしょう。任せることで、責任感が育つのだそう。ルールの決め方や実施の仕方などをご紹介します。

家族のルールを決めるのは、まずゴールを決めてから

家族のルールは、まず「ゴール」を決めてからにしましょう。家族会議で「どういう家にしたいか」を決めるのです。
「いつでも友達が遊びに来られる家」といった家の綺麗さを表すものから、「働かざる者、食うべからず」「情けは人のためならず」といった標語でもよいでしょう。子どもたちにアイデアを出させれば「そのために何をしたらいいだろう?」と考えることにも繋がります。また、親から一方的に言われるよりも納得感があるものです。

ゴールを決めたら、曜日ごとに担当を決めます。「朝のお掃除」など時間を決めてもよいでしょう。月曜日はトイレ掃除、火曜日はお風呂掃除など……。担当を決めたら表に記載して、冷蔵庫などの見えるところに貼っておきます。

とにかく簡単なものからスタート

お手伝いは、まず簡単なものからスタートしましょう。粂井さんによると、立って歩けるようになればもうお手伝いはできるとのこと。ゴミをゴミ箱に入れるだけでもお手伝いです。
例えば、食事の支度全般は難しくても、レタスをちぎるだけ、テーブルを拭くだけ、箸を並べるだけ、といったことなら小さな子どもでも手伝えます。

余裕のある時に教えておけば、楽になる!

日常で簡単なことからスタートするのがベストですが、少し難しい家事の場合は、教えてあげる必要があります。
毎日の家事・育児に、仕事にと忙しいと、つい教えることも煩わしくなってしまいます。そんなときには、週末など時間のあるときに教えてあげるとよいでしょう。
ひととおり教えたら、忙しいときにもお願いをしましょう。少しできていないことがあっても、任せるのがポイントです。

週末の上履き洗いは自分でさせよう

週末にできる幼稚園や小学校の上履き洗いはぜひ子どもにしてもらいましょう。
専用のブラシを使ってお風呂場で洗ってもらいます。「綺麗になったね」などと声をかければ子どもも嬉しいはず。
「おひさまの洗たく くつクリーナー」なら、泡で洗うのが楽しく、干しているときの太陽光や室内光でさらに白くなるので、子どものやる気もアップします。

3.季節ごとのお手伝いはイベントにしよう

日常的でないお手伝いは、子どもに伝統行事を伝えられる大切な機会でもあります。大掃除なども、イベントにすると楽しいでしょう。子どもと楽しめる貴重な時間と考えて、一緒にできるよう工夫してみましょう。

季節のイベントで、伝統も引き継がれる

日常的なお手伝い以外に、季節の行事も大切にしたいもの。お月見の日に一緒にお団子を丸めたり、おせち料理を作ったり、おひな様を並べたり。
日本の伝統行事を楽しむだけでなく、準備も一緒にすることで思い出が増え、より伝統を大切にする心が育まれるのではないでしょうか。

年末の大掃除や季節の衣替えも単なる家事としてとらえず、「新しい年や季節を迎える準備だよ」などと会話しながら、日本ならではの季節感や文化を伝えていきましょう。

衣類や人形をしまうときには防虫剤を

衣類やひな人形をしまう際には、防虫剤を忘れずに。「こうして虫が付かないように、来年まで大切にしまおうね」と声をかけながら、物を大切にする心を育めるといいですね。

ひと仕事終えたあとは家族にごほうびを

大掃除や衣替えなどのお手伝いは、家族みんなで参加する一大イベントにするのがおすすめ。終わりが楽しくなるように「頑張ってくれたら今夜はステーキを食べに行こう!」などとやる気がアップするごぼうびを用意しておくのがおすすめです。
大掃除の日を、子どもが楽しみにしてくれるようになるかもしれません。

やることをリストにして、選んでもらう

日常的でないお手伝いは、やることをリストにすると子どももわかりやすいでしょう。「どれからやる?」と聞いてみたり「用意、スタート!」とゲームのようにしても。
また、カードゲームが好きな子どもなら、裏に掃除する場所を書いたカードを用意して、引いてもらうのも楽しそう。
ゲーム性を取り入れて、子どもが楽しくなる工夫をしたいですね。

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