同じ衣類を何度も着用しているとどうしても発生してしまう色あせや変色。経年劣化するため、仕方がないと分かってはいても、お気に入りであればできるだけ長くきれいな状態で着たいものですよね。全国クリーニング生活衛生同業組合連合会・クリーニング綜合研究所で繊維製品品質管理士の資格を持つ堀川祐子さんによると、実はちょっとしたことに気を付けるだけで、衣類の色あせや変色を防ぐことができるそうです。
色あせや変色の原因は3つ!
気が付くと、買った当初よりも衣類の色が薄くなっていたり、同じ生地なのに衣類の外側と内側とでは色が違っていたりすることがあります。一度色あせてしまうと元には戻せないので、長く着続けるためには、色あせの原因や対策を知っておくことが大切です。
そもそも、なぜ色あせや変色が起こるのでしょうか? その原因は主に3つあると言われています。
原因①:紫外線
天日干しをすると、日光に含まれる紫外線によって衣類がダメージを受け、衣類の染料の成分が壊されます。これが色あせの原因です。日光などが直接当たる衣類の表面が色あせするので、襟の裏や衣類の内側の色と比較すると分かります。
また、日光に当てなければ大丈夫だろうと思いがちですが、実は部屋干しも要注意。蛍光灯にも紫外線が含まれており、同じように色あせの原因になります。長期間部屋干しをしたり、普段からオープンハンガーに衣類をかけていると、紫外線のダメージが蓄積して、色あせが進行していくので注意が必要です。
原因②:ガス
あまり知られていませんが、排気ガスやキッチンのコンロ、石油ストーブなどの燃焼ガスも、衣類の染料の成分を分解してしまう要因になります。
ガスによる変色は、空気が滞留している場所で起こりやすい傾向があります。日の当たらないクローゼットにしまっているのになぜか変色している、ということがあればガスが原因かもしれません。ガスには空気より重い特性があるため下に溜まりやすく、衣類の裾や袖など下の方から上部にかけてグラデーションの様に変色しているケースが多く見受けられます。
また、水分に吸着しやすい性質もあるため、雨や水などで濡れている個所にガスが吸着するとその部分だけ変色することがあります。
原因③:水道中の塩素
水道水には塩素が含まれていますが、その塩素に反応して染料の成分が壊れることもあります。衣類を洗う回数が多いと、それだけ塩素との化学反応が起こるため、徐々に変化していきます。
色あせしやすい条件や衣類の素材は?
紫外線が強くなる夏は、日光による色あせが発生しやすくなります。また、汗をかきやすい時期でもあるため、複合的に変化が発生することがあります。さらに、衣類にしみついた汗や皮脂が酸化することによって、黄ばみなどの変色の原因にもなります。
注意したい素材は、綿やシルク、リネンなどの天然素材です。特に綿は摩擦に弱く、洗濯によって繊維が毛羽立って白っぽく見えることで、より色が変わって見えます。紙を水で濡らしてくしゃくしゃにした後で広げてみると、繊維が毛羽立ってごわごわになりますが、その状態が衣類でも起こっているようなイメージです。反対に、化学繊維は表面がつるつるとした繊維のため、天然繊維と比べると摩擦の影響を受けにくい素材です。
洗濯や干し方、収納する際の注意点
では、洗濯するときや干すとき、収納時にはどんなことに気を付ければよいのでしょうか。実は、ちょっとしたことに気を付けるだけで、色あせや変色を予防することができます。日常的に取り入れやすいちょっとしたコツをお教えしますので、ぜひ試してみてください。
●洗濯時
衣類を裏返して洗濯することで、他の衣類との摩擦によって表面がダメージを受けるのを軽減することができます。
衣類の洗濯表示マークをきちんと確認したうえで洗うのもポイントです。素材によっては洗濯できないものがあり、水洗い不可の衣類を家庭で洗濯してしまって、変色や色落ちしてしまう場合があります。洗えないものはクリーニングに出すようにしましょう。
●干すとき
天日干しをする際も同様に、衣類を裏返して干し、紫外線が当たる部分を極力減らすようにしましょう。長い時間日光に当てていると、それだけ紫外線のダメージを受けます。乾いたらすぐ取り込みましょう。
すぐに洗濯物を取り込めない場合は、紫外線が当たらない場所で陰干しをするのもおすすめです。また、室内に干すときに窓ぎわのカーテンレールを使うのは、あまりおすすめしません。太陽と蛍光灯、両方から紫外線が当たり、ダメージを受けやすくなります。
●収納時
汗や皮脂が付いていると酸化して変色することがあるため、きれいに洗濯をしてから収納するのがポイントです。スーツなど、なかなか洗えない衣類はスチームアイロンをかけ、ブラシなどをすると汚れが落ちやすくなります。洗えない分、こまめに手入れをしてきれいな状態を保つようにしましょう。
オープンハンガーなどで衣類を収納している人は、室内の蛍光灯の紫外線から守るために、UVカット加工の防虫カバーなどを使用すると色あせを防止できます。ウォークインクローゼット内にも蛍光灯がついているので、長期間衣類を収納する際は防虫カバーを活用すると安心です。
暗いところに収納していれば色あせの心配がないと思いがちですが、ガスの影響を受けやすいことを忘れずに。特にクローゼットの中は空気が滞留しがちなので、こまめに換気をするようにしましょう。また、空気を入れ替えやすいように、ハンガー同士の間隔もしっかりとって、空気の通りをよくしてください。
室内の照明による色あせは防虫カバーが最適
「ムシューダ 防虫カバー」は、衣類の上からサッとカバーをかけるだけで、UVカット加工の特殊フィルムが色あせを防いでくれます。虫やホコリから衣類を守るのはもちろん、防カビ剤も配合しているので、カビの発育を抑え、カビからも守ることができます。「スーツ・ジャケット用」と「コート・ワンピース用」があるので、衣類の種類やサイズに合わせて選びましょう。
取材協力:全国クリーニング生活衛生同業組合連合会・クリーニング綜合研究所 繊維製品品質管理士 堀川祐子さん
全国クリーニング生活衛生同業組合連合会HP