エステーは今、従来の日用品に加えて、「かおり」を通じて心身の健康や快適な空間づくりをサポートする“かおり×ウェルネス”に力を入れています。そのひとつが「空間の演出」です。オフィス空間でパフォーマンスが向上するように、ホテルで宿泊客がほっと和らげるように。目的に合わせた「かおり」で、より良い空間づくりをお手伝いします。
現在開催中の大阪・関西万博でも、エステーのつくった「かおり」がパビリオンで活用されています。どのような香りが、どこでどのように来場者の体験を深めているのか、くらしにプラス編集部が実際に体験してきました。
「恐竜王国福井」恐竜が生きた森と大地を「かおり」で表現
最初に伺ったのは、関西と周辺の府県が合同で出展する「関西パビリオン」です。そのなかの「福井県ゾーン」では、「恐竜」をモチーフにし、1億2000万年にもわたる時空の旅を通じて「恐竜王国福井」を体験できる迫力ある展示となっています。
展示への没入感をさらに高められるよう、エステーは2種類の香りをつくりました。
ツアーゲートエリアで「フクイラプトル」の実寸大模型とともに、来場者をお出迎えするのは、「大地のかおり」(Dinosaur Earth)です。福井県で多くの恐竜化石が発掘される勝山市の北谷地区から復元された環境をイメージしています。

実は恐竜が生きた前期白亜紀の北谷地区は、ジャングルのように植物が生い茂っていたわけではなく、乾季と雨季がある一部乾燥した環境だったそう。その生息環境を参考に製作した香りは、乾いた土や木の幹のように、ややこうばしく落ち着いた印象。その奥から、かすかに若葉のような清涼感ある香りが追いかけてきます。針葉樹や裸子植物の仲間から着想した温かみのあるウッディノートと、恐竜そのものから着想した動物臭を彷彿とさせるアニマリックノートが特徴的です。 香りを監修した福井県立恐竜博物館副館長(研究)の寺田和雄さんは、古植物学の専門家です。香りのサンプルをチェックしたところ、専門家としてその表現力の高さを学術的な観点からも高く評価してくださいました。

発掘体験エリアでは恐竜化石の発掘が体験できます。洞窟の壁に懐中電灯型デバイスを向けると、恐竜の化石が姿を表します。
実際の化石も展示され、触れることもできます。その化石とは…なんと恐竜のうんこの化石! 入場者のみなさん、大盛り上がりで触っていました。
発掘体験エリアでは、恐竜が生きた時代の「森のかおり」(Forest World)を表現。当時の植物は現代のように進化しておらず、森には針葉樹やソテツといった裸子植物とシダの仲間が生い茂っていました。寺田さんの監修を受け、エステーが環境に忠実につくったのは、シャープで奥行きのあるグリーンノートが特徴的な香り。芳香剤や一般的なアロマとはまったく違う野性味を感じさせます。植物のワイルドなイメージを表現し、展示のリアリティを高められるように創りました。
「記憶に残る展示で、万博後も福井県に来ていただくお客様を増やしたい。記憶に直結する香りは、狙いにぴったりのコンテンツだと思う」と福井県交流文化部課長の笠島亘弘さんは、期待を語ってくれました。

時空の旅エリアでは恐竜の繁栄、絶滅から現代そして未来までの物語がVR映像で、前後左右の大型スクリーンに投影されます。福井県で生きた恐竜が目の前を駆けていく臨場感は圧巻です!
「PASONA NATUREVERSE」微生物が織りなす生命の世界へ没入
次にお邪魔したのは、総合人材サービスを手掛けるパソナグループが「いのち、ありがとう」をコンセプトに、未来感あふれる展示を行うパビリオン「PASONA NATUREVERSE」です。
このパビリオンではiPS細胞による再生医療の第一人者澤芳樹氏が開発するiPS心臓も展示されています。脈々と鼓動を打つ様子は生命の神秘を感じさせます。

©Tezuka Productions
「NATUREVERSEショー」では、直径約2mのキューブ型ディスプレイが、上下左右、回転と、ダイナミックに動きながら、自然とテクノロジーが共生し、人々が思いやりの心でつながる「ありがとう」が響き合う世界を表現します。 このような最先端の技術がずらりとならぶパビリオンで、最終盤に体験できるのが「Wonder Earth 〜あなたの知らない微生物の世界〜」です。

照明を落とした空間には、微生物の微細な動きを音に変換した穏やかなBGMが流れています。ここでは、土の中に息づく多様な微生物たちの世界に深く没入することができます。エステーが製作したのは「土のかおり」です。
微生物が棲むような豊かな土は、枯れ木や枯れ葉、鉱物、動物やカビなどが入り混じった複雑な環境です。人によって土に抱くイメージは異なりますが、誰もが展示空間に没入できるリアリティは追求したいところ。エステーは、パソナグループが追求する世界観を綿密にヒアリングし、その上で香りを創り上げました。 「地球上で唯一、分解機能を持つ微生物が自然を支え、私たちはそこで作られた食べ物を口にし、体の中にも存在する微生物が消化を通じて分解・排泄を行うことで、大きな循環のなかで生きている。人間は豊かな自然により生かされ、その一部なんだということを感じてほしい」と「PASONA NATUREVERSE」パビリオン館長の小沢達也さん。

コンセプトを受けてできあがった香りは、潤い豊かな土を思わせる香りで、なかでもウッディな印象が強調されているよう。ただ、成熟した木の幹ではなく、柔らかくて、ぐんぐん伸びる若い根のような、フレッシュな生命力を感じさせます。
「香りは脳の海馬(記憶を司る部分)に直接作用すると言われます。万博が終わっても、私たちが訴えたい自然の大切さを、嗅覚を通して呼び起こすパワーがあると感じました」と小沢さん。パビリオンの来場者からも、「安心する」「土の中にもぐっているみたい」などの声が上がっているそうです。
万博で見えた「香りの力」:体験を深化させる嗅覚の可能性
「恐竜王国福井」(福井ゾーン)、「PASONA NATUREVERSE」ともに、コンセプトの際立った展示の中で、香りが効果的に使われていることを実感しました。単に心地よいだけでなく、テーマに深く没入させ、訪れた人の体験をより一層深化させる工夫の一端を担っています。
担当したエステーの社員は、「恐竜の時代も、微生物の世界も、誰も体験したことのないものを香りとして表現することは、とても難しかったです。お客様を不快にさせることなく、リアリティを演出するのは、大変地道な作業で苦労もありましたが、取組み甲斐がありました」と振り返ります。 「香りは写真や映像では伝えられないからこそ、リアルな現場に『行ってみたい』と思わせ、記憶に紐づくことで『また行きたい』と思わせる効果がある」とも語ります。視覚、聴覚に次ぐ第三の演出手段として、嗅覚に働きかける香りの持つ無限の可能性を感じた万博でした。
消臭力も万博で大活躍!シグネチャーパビリオン「null²」でニオイ対策

メディアアーティストの落合陽一さんが手掛けるシグネチャーパビリオン「null²(ヌルヌル)」では、エステーの消臭剤が導入されています。閉鎖された空間のなか、靴を脱いで体験するパビリオンでは、足元のニオイが気になることも。そこで置き型の消臭力を常時設置し、お客様の入れ替え時にはスプレータイプを空間やフロアマットに噴霧。「消臭力を導入してから、ニオイが気にならなくなった!」とスタッフの方々にもご満足頂いています。

