つらい花粉の対策は、まずマスクなどで花粉を吸い込まないよう工夫すること。他にも、薬で体の中からアプローチする方法など、さまざまな発想の対策法が考えられています。エステーが提案するのは、森のチカラを活用して花粉のアレルゲン物質に直接アプローチする方法です。
花粉症は体の中で異物と「抗体」が結びついて起こる
花粉症は、異物を排除しようとする体の仕組みが、マイナスに働く「アレルギー疾患」の一種です。異物が入ってくると、人体は特定のアレルゲン物質(抗原とも呼ばれている)と結びつき排除する「抗体」というタンパク質をつくります。抗体の働きが過剰になると、くしゃみや鼻水、目・のどのかゆみなどのつらい症状が現れるのです。
花粉症が突然やってくるのはなぜ?
似たような環境で生活しても、花粉症になる人とならない人がいます。これは、抗体のできる速さが人によって異なるからです。抗体が少ししかないうちは、花粉症のように過剰なアレルギーは起こりません。
しかし、花粉を取り込み続けると、体の中で抗体がどんどん作られていきます。やがて、抗体が一定量を超えた時、アレルギー症状を起こすようになります。花粉症が「突然やってくる」と言われるのは、体の中に蓄積された抗体の量が大きく関連していると考えられます。
これがスギ花粉のアレルゲン物質だ
花粉症の原因物質は、正確には花粉そのものではありません。花粉に含まれる「アレルゲン物質」です。下の画像はスギ花粉を電子顕微鏡で撮影した写真。
出典:龔 秀民(2016)「スギ花粉アレルゲンCry j1、Cry j2の室外および室内の飛散挙動に関する研究」埼玉大学王青躍研究室博士論文
大きさは30ミクロン(1ミリの100分の3)ほど、左上に突起が見えます。この突起部分に、0.7ミクロン(1ミリの1万分の7)という、とても小さなアレルゲン物質がついていています。突起は花粉の殻の外に出ているため、風に乗って軽々と飛散します。また、このサイズのアレルゲン物質はマスクの繊維を通り抜ける可能性もあります。
花粉のアレルギー性を下げる森の香り成分
森で空気を思い切り吸い込むと、大変気持ちよく感じます。森のみずみずしい雰囲気や、爽やかな香りだけのおかげではありません。樹木には大気汚染の原因となる二酸化窒素を除去する力があり、森の空気は実際に「きれい」なことがわかっています。
これには、樹木の香り成分が大きく関わっています。香り成分には空気中の小さな粒子と結びつく性質があり、二酸化窒素に対してもいわばコーティングするような働きをします。二酸化窒素を含む大きな粒子となって地面に落ち、樹木はそれを根から栄養として吸収します。
効果が大きかったのは「トドマツ」
香り成分はブナやケヤキといった広葉樹より、スギやヒノキなどの針葉樹に多く含まれます。
さまざまな樹木から精油を抽出し、試験した結果、二酸化窒素の除去に最も大きな効果を示したのが「トドマツ」でした。葉に含まれる「βフェランドレン」が有効であることがわかりました。
さらに、エステーが埼玉大学大学院理工学研究科王青躍教授と共同で行っている研究では、「トドマツ」の香り成分の作用は、スギ花粉のアレルゲン物質にも働くことがわかりました。香り成分が花粉表面をコーティングすることで、アレルゲン物質が抗体と結びつきづらくなると推測されます。結果的にスギやヒノキの花粉アレルギー性を低減させることにつながるのです。
※本記事は、2019年2月に公開した内容の一部をリニューアルしています。