1.空気の汚れの正体
目に見えないPM2.5の正体は?
「PM2.5」とは、大気中に浮遊するさまざまな成分のうち、粒径(粒の大きさ)が2.5μm以下の粒子を表す総称。つまり、「PM2.5」という特定の物質やウイルスが存在するわけではありません。1μmは1000分の1mmと非常に小さいため、PM2.5は体の奥へと入り込みやすく、健康に及ぼす影響が大きいのが特徴。髪の毛やほこり、花粉、ウイルスなどに比べて、下図(左)のように差があります。粒径の大きな成分は喉や目の粘膜がキャッチしてくれますが、小さな成分は咽喉などをくぐり抜けて気管や肺まで到達し、沈着するため、PM2.5には注意が必要なのです。
排気ガスや喫煙など身近にも発生源がある
PM2.5は、中国から来る大気汚染物質と思われがちですが、実は国内にも原因があるもの。火山の噴火など自然由来で生まれる場合もありますが、工場や自動車、物の燃焼など、人為的に発生するケースが多く、発生源から直接大気中へ放出される一次粒子と、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)といったガス状の大気汚染物質が、化学反応を起こして生成される二次粒子があります。
また、家庭内では喫煙や調理、石油ストーブの使用といった日常的な行動から発生する場合も。だからこそ、身近な“空気の汚れ”に目を向けることが大切なのです。
黄砂や花粉にも要注意
これからシーズンを迎える黄砂にも注意が必要です。黄砂とは、冬から春にかけて中国大陸内部の砂漠や高原から、風によって巻き上げられた土壌の粒子が、偏西風に乗って日本に飛んでくる現象。黄砂は、飛散してくる途中で、大気中の硫黄酸化物や窒素、炭素、ウイルスなどを吸着していきます。別の物質との合流によって徐々に粒子が破壊されて小さくなり、いずれPM2.5に変化してしまうことがわかっているのです。
また、スギやヒノキの花粉にも気を付けたいところ。花粉本来の粒径は30μmと大きいのですが、空気中の大気汚染物質に接触すると、細胞が壊れやすくなり、亀裂が入ります。そこから水分を吸収することで、花粉の細胞が破裂。最終的には、PM2.5より小さい粒子になることがあるのです。破裂してむき出しになったアレルゲン物質は、人体の奥まで届きやすくなるため、花粉症などのアレルギー症状がより強くなるケースも。近頃は地球温暖化によって花粉と黄砂が2月頃から同時に発生しているため、さらに危険性が高まっています。
“空気の汚れ”の身体への影響
人間は一日に14,000~15,000リットルもの空気を吸っています。食料や水にはさまざまな選択肢が用意されているのに、空気は自分で選べないのが現状。だからこそ、身の回りの空気をケアし、質を高めていくという意識が重要なのです。
2.空気の汚れ対策(屋外編)
お出かけ前後にちょっと気を遣ったり、行動をほんの少し変えるだけでも、汚れた空気を体に取り込みにくい生活が送れます。特に、自分でケアすることができない子どもの対策は、お母さんの仕事。覚えておきたいポイントをチェックしましょう。
外出前には空気の汚染状況をチェック
窓から外を眺めても、空気の汚れはわかりにくいもの。
PM2.5の汚染状況は、環境省が運営しているWebサイト「そらまめくん(環境省大気汚染物質広域監視システム)」を活用するのがおすすめです。全国の大気汚染状況を24時間提供しており、毎時間の汚染測定結果や注意報・警報の発令状況がチェックできます。使い方は簡単で、トップページから見たい地域をクリックし、表示項目で「PM2.5」を選択するだけ。地図上に1時間あたりの濃度が表示されます。
環境省が主導し、専門家が策定した「注意喚起のための暫定的な指針」(上表によると、1日平均値70μg/m3を超す日には、外出や運動を制限することが推奨されています。ただし、環境基本法に基づく「人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準」の数値は、1日平均35μg/m3。ただちに健康被害が現れるということではありませんが、子どもや呼吸器疾患のある人など、空気の影響を受けやすい人の場合は、より厳しい環境基準値をベースに考えるとよさそうです。
環境省のWEBサイトでは、PM2.5のほか、黄砂や花粉の飛散情報も確認できます。ぜひ参考にしてみてください。
※1m3=1立方メートル=1000リットル
空気の汚れが激しい日の行動3か条
粒子が小さいPM2.5は体内に取り込みやすいため、濃度が高い日は行動にも気をつけましょう。
屋外を歩いていて、呼吸からPM2.5などを吸い込んでしまうことは避けられません。地面の近くはとりわけPM2.5の濃度が高いため、身長の低い子どもは影響を受けやすくなります。濃度の高い日は、なるべく室内に。どうしても外出が必要な場合、ベビーカーには雨天用のビニールカバーをかけて赤ちゃんを保護するのもおすすめです。
②激しい運動はしない
激しく体を動かすと呼吸量が増え、余計にPM2.5を吸ってしまいます。軽いメニューに切り替えるか、少しでも影響が少ないよう、スポーツジムなどの屋内で運動するとよいでしょう。
③歩く場所に気をつける
自動車から出る排気ガスはPM2.5の大きな発生源です。交通量の多い大通りは避け、できるだけ路地を歩くのがポイント。交差点やバス停などは、車がエンジンをふかすため、特に排ガスが出ます。子どもが遊びに行く場所も、大きな道路に近い公園などはなるべく避けるとよさそうです。
手軽に対策! 有効なマスクの選び方
日頃から取り入れやすいマスクは、空気の汚れ対策には欠かせません。ただし、PM2.5は粒子が小さいため、密閉性の低いプリーツマスクなどでは防げないのだとか。日本の厚生労働省が定めた「DS2」「DS3」、米国労働安全衛生研究所の「N95」といった規格の防塵マスクなら、PM2.5対策にも効果があります。吸着材や活性炭が入っているタイプもよいでしょう。
また、顔に合ったものを選ぶのも重要。顔の小さい人や子どもは、特に不要な隙間ができやすいので、ぴったり合うものを探しましょう。ただし、PM2.5よりも小さく、流れ込んできてしまうガスなどの対策には効き目が期待できません。
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3.空気の汚れ対策(屋内編)
屋内だからといって安心するのは大きな間違い。汚れた空気を入れないように、また、できるだけ空気をキレイにする努力が必要です。暮らしや家事のポイントを勉強しましょう。
帰宅時は「うがい・手洗い・たたき落とし」を習慣に
部屋に入る前には、衣服や髪の毛についた黄砂や花粉、ほこりをしっかりと叩き落とします。家の中に入れないためにも玄関のドアを開ける前に。
室内に汚れた空気を入れないために
一般的な気密性の住宅では、普通に暮らしているとさまざまな粒子がどんどん流れ込みます。無駄に窓やドアを開けず、できるだけ密閉を心がけましょう。
そこで気を付けたいのは、換気のタイミングです。朝起きて窓を開け、空気を入れ替えるのはありがちな習慣ですが、朝8~10時頃は通勤時間のため交通量が多く、空気が汚れている時間帯。主要道路に面していたり、風向きが悪い場合は特に、健康のためにしている換気が逆効果になってしまいます。できるだけ車が少ない早朝、道路に向いていない窓を開けるようにしましょう。
空気清浄機や空気清浄フィルターを併用する
空気清浄器やフィルターで、PM2.5などの汚れた空気を100%カットすることは、そもそも不可能。しかし、少しでも濃度を減らせれば、充分意味があります。特に、寝室のように長時間過ごす部屋や子ども部屋には、導入するとよいでしょう。購入時には、PM2.5や花粉などに対応しているか規格をチェックしましょう。
空気が汚れている日の家事のポイント
まずは、洗濯物や布団は部屋干しにすること。屋外に干していると、乾くまでの時間で、さまざまな汚染物質を吸着してしまいます。子どもの衣類を中心に、できるだけ室内に干したり、乾燥機を使うよう心がけましょう。
掃除をするときは、室内の汚れた空気をきちんと集めるようにするのがコツ。掃除機を使うと、床に溜まっていたPM2.5や花粉を改めて飛散させてしまうことにつながります。濡れた雑巾で水拭きをすれば、まき散らすことなく、粒子をキャッチできます。ハイハイをしたり、床をなめたりするような赤ちゃんがいるご家庭では、とりわけ念入りな掃除が必要です。