1.不調の原因は“冷え”かも
体温が1度下がると、体にどんな影響があるの?
また、人の体は、体温が1度下がるだけで免疫力が約30%、代謝が約12%も落ちることがわかっています。免疫力が下がれば体はさまざまなウイルスの影響を受けやすくなり、病気のリスクが高まります。また、代謝が落ちると、肥満やむくみ、便秘、肌荒れにもつながるのだとか。こういった“体温低下=冷え”による不調は、どこかの臓器が病気になっているわけではありません。検査をしてもなかなか原因が見つからないため、自分で気を付ける必要があるのです。
なぜ現代人に冷え性が増えているの?
①運動不足
体温の4割は、筋肉が生産しています。筋肉が多い人は発熱量も増えるため、男性に比べて筋肉量の少ない女性に冷え性が多いのは仕方のないことなのです。近頃は、掃除機ロボットや洗濯乾燥機といった便利な家電の普及で、日常の運動量が減っています。意識的に体を動かして筋肉を鍛えなければ、体は冷えやすくなる一方でしょう。
②食生活の変化
日本の昔の食生活には、玄米や煮物、漬け物などの発酵食品といった、体を温める料理が多く取り入れられていました。ところが現代では、生野菜のサラダやスムージー、減塩料理など、冷えを招きやすい食習慣が増えています。
また、とにかく水分をたくさん摂る習慣も冷えのもと。血流をよくしなければ水分は正しく循環しないため、排出できなかった余分な水が体に残ってしまいます。濡れた水着を着たままでいると寒くなってくるのと同じように、水分の摂りすぎは冷えを助長するのです。
③入浴時間の短縮
皆さんは、毎日お湯に浸かっていますか? この時期だけでなく、夏も入浴するのが冷え症防止のポイント。最近はシャワーで済ませている人が多いですが、それでは、体が温まる時間が生まれません。入浴のコツはこの後で詳しく紹介します。
今のカラダはどんな状態? 冷え性チェックリスト
隠れ冷え性の見分け方
体温が36.5度以上あるからといって、油断してはいけません。暖房が効いたオフィスの中では、上半身は暑くても下半身がひんやり……なんてことも。体の芯が冷えきっていると、表面に熱が逃げてしまい、手足や顔が火照ることがあります。体温計の数値に惑わされず、お腹や下半身を触ってみて、冷たくなっていないか確認しましょう。
また、階段をちょっと上り下りしたり、軽く走っただけでどっと汗をかくのは、水分が溜まっている証拠。代謝がよいわけではありません。運動や入浴などを5~10分続けてから、じんわりと出てくるのがよい汗。体の水分が循環していないために出る“悪い汗”と見分けましょう。
2.上手にカラダを温めるコツ
日常生活にちょっとした運動をプラスしたり、入浴に気を遣うだけで、ぐっと体が冷えにくくなることも。たった2週間の生活改善で、平熱が0.5度上がったケースもあるそうです。できるところから、生活を見直してみませんか。
使い捨てカイロで外側から温める
最も手軽なのは、使い捨てカイロの活用です。オフィスでも自宅でも、格好や行き先を選ばずに体を温められます。最も温めたい場所は“お腹”です。たくさんの臓器や血液が集まっている体の中心で、東洋医学では「お腹」ではなく「お中」と表記するほど。血液は約45秒で体を一周するため、お腹を温めることで効率的に全身をケアできます。また、腸には全体の7割を占めるリンパ球がいるため、免疫力のアップも見込めるのです。
下半身をしっかりケア
下半身の血行をよくするのも大切なポイントです。上半身に血が集まるとのぼせてしまうので、ふくらはぎや足首、足の裏を重点的に温め、血流を促すとよいでしょう。特にふくらはぎには、重力にさからって心臓に血液を戻す“筋肉のポンプ”があります。ここが冷えているとうまく血が戻せず、むくみや末端冷え症の原因になってしまうのです。キーワードは「頭寒足熱」。頭や上半身は少し涼しいくらいでも、足元はカイロやレッグウォーマー、湯たんぽなどを活用してきちんとケアしましょう。
むくみやコリが気になる部分を温める
お腹が痛いとき、お母さんに手を当ててもらった思い出はありませんか? 昔からいわれている「手当て」には、具合の悪い部位を温める意味もあります。腹痛や腰痛、生理痛といった痛みのある部分や、むくみ・コリの気になる部分は温めてみてください。血液の流れがよくなり、症状が改善されるかもしれません。そんなとき、局所的に保温できるカイロはとても便利です。
筋肉をつけて内側から温める
先に解説したように、筋肉量が多いとたくさんの熱が作れるため、体が冷えにくくなります。運動を少しでも取り入れて、日常的に鍛えていきたいところ。特に、おしりや太ももなどの大きな筋肉があり、血流にも影響を与えやすい下半身を鍛えるのが効率的です。スクワットやもも上げなどのトレーニングはもちろん、椅子に座っているとき内ももに本を挟んだり、歯磨きをするときにつま先立ちをするといった“ながら運動”など、何でもかまいません。きちんと筋肉を使えていれば、運動するのは一日おきでもOK。意識的に体を動かしましょう。
お風呂で外側からも内側からも温める
目標は「一日一汗」。汗が出ると体温が1度上がり、免疫力が5~6倍になるといわれています。汗をかく方法はもちろん運動でもよいですが、お風呂なら毎日手軽に続けることができるでしょう。
3.冷えない体を作る食生活
体を作っているのは、自分が食べたもの。不用意に体温を下げる食事をしてしまっている可能性もあります。食べ物と体温の関係を理解して、今の自分に必要な食生活を送りましょう。
体を温める“陽性食品”を食事の中心に
まずは、食べ物の特性を知るところから。東洋医学では、暑い土地で生まれ、体を冷やす食べ物を「陰性食品」、寒い土地で生まれ、体を温める食べ物を「陽性食品」と呼んでいます。昔は、自分の住む土地で作られているものしか口に入ることがありませんでした。北国に住む人は陽性食品を、南方に住む人は陰性食品を自然と食べており、体が最適な温度に保たれていたのです。しかし、季節や場所を問わず、さまざまな食べ物が手に入るようになった現代では、自分で気を付けなければなりません。
そのためには、冬が旬の食べ物を選べばOK。体を冷やさないだけでなく、風邪の予防にも役立ちます。たとえば、人参のベータカロチンはビタミンAに変わり、粘膜を強化して、風邪などのウイルスを寄せ付けにくくしてくれます。加熱してもビタミンCが壊れないイモ類や、免疫力アップに効果が見込める玉葱やにんにく、にらもおすすめです。
反対に、トマトやそうめん、バナナ、麦茶といった夏の食べ物は体温を下げてしまうので、冷え対策という視点では避けたほうがよいでしょう。
いつもの飲み物を変える
また、近頃流行っているスムージーにも注意が必要です。スムージーはそもそも、体を熱くする肉類をたくさん摂取する欧米で開発されたレシピ。日本人の体や食生活に最適だとは言いにくいのです。とはいえ、定期的に野菜や果物を摂取するのはよいことなので、人参やリンゴなどの陽性食品を取り入れて作りたいですね。