夏はとにかく暑いため、クーラーの効いた部屋で過ごすことも多くなります。しかし、あまり体を冷やしすぎると、体調をくずしたり、体に異常が出ることも。特に、オフィスなどの公共施設では、温度調節ができないので注意が必要です。そこで、イシハラクリニックの石原新菜副院長に、体の冷えによる悪影響や、屋内で実践できる寒さ対策をうかがいました。
夏は冬より体が冷えやすい
夏は外が暑いので薄着になりがち。しかし、オフィスや電車の中など冷房の効いた場所に長くいることで、体は冬の時期よりむしろ冷えやすくなります。さらに、暑いからといって冷たい飲み物や食べ物をたくさん摂るため、ますます冷えてしまいます。
昔は冷房を使う代わりに、夏野菜やソーメン、麦茶などの食べ物や飲み物で体温を下げていました。しかし、オフィスで毎日冷房にあたって過ごしていて、同じように体を冷やす食事をすれば、体はどんどん冷えてしまうので注意が必要です。
体が冷えるとさまざまな不調が
冷たいものや冷房で体を冷やしすぎると、さまざまな不調が出てきます。内臓まで冷えてしまうため臓器の働きが鈍くなり、胃もたれや消化不良、下痢、便秘などにつながりやすいです。また、暑い屋外と寒い屋内の出入りを繰り返すことで、体温調節の役目を持つ自律神経が乱れやすくなり、体がだるくなったり、夏バテの症状が出ることも。さらに、女性の場合は子宮卵巣やホルモンバランスにも影響が出るため、生理不順や肌荒れ、むくみが出るおそれもあります。
これら体の不調は「冷房病」とも呼ばれ、老若男女関係なく、数時間冷房にあたっただけで発症してしまう人もいます。さらに気を付けたいのは、症状が夏だけの一時的なものでなく、秋や冬の時期まで長引くこともあるということです。特に自立神経やホルモンバランスの乱れは慢性的に続きやすいので、体の冷やしすぎには十分注意しましょう。
オフィスでできる冷え対策
長時間座りっぱなしのオフィスでは、腹巻きや貼るタイプのカイロなどもおすすめです。カイロは、胃腸が悪い人は胃の位置、子宮卵巣の不調には下腹部、むくみが気になる方は腎臓が弱っている場合があるので腰の位置など、症状に合わせて貼る場所を工夫できます。体の悩みが特になければ、おへそ辺りに貼るといいでしょう。体は「頭寒足熱」の状態がいいので、寒いときは下半身を中心に温めましょう。
外では冷たいものを飲んでもいいですが、オフィス内にいるときは、できるだけ温かい飲み物を用意しましょう。しょうが紅茶(※)がおすすめです。しょうがは体を温めるのに最適な食材です。自宅で用意して保温性のあるマグなどに入れておけば、オフィスでも温かいまま飲むことができます。
運動も効果的です。体は筋肉量を増やしてあげると、代謝や体温が上がります。大きな筋肉は足やお尻にあるので、下半身を鍛えると効率良く筋肉量が増やせます。デスクでは、座りながら曲げた足を前に延ばすだけでOK。太ももが辛くなってくると思いますが、体も温まってきますよ。休憩時間などに、屈伸をしたり、つま先立ちをするのも良いでしょう。
また、移動もできるだけ階段を使いましょう。4階か5階分だったら頑張ってほしいですね。ただし、汗をかいたまま過ごしていると、体が冷えやすくなるので必ず拭き取りましょう。下着は速乾性のあるものを着用して、できればオフィス内でも替えがあると良いです。
普段から“温活”生活を
体を冷やさないためには、オフィスだけでなく普段の生活から体を温める“温活”を心がけましょう。夏はシャワーだけですませがちですが、温かいお風呂にはいってしっかり体を内側から温めましょう。食事は、体を温める「陽性」の食べ物(※)を積極的に取り入れましょう。また、味噌汁には塩分やアミノ酸が入っていて吸収も良いので、夏バテや汗をかいて疲れているときは元気になりますよ。上手に体を温めて体調を整え、夏を快適に乗り切りましょう。
※「しょうが紅茶」の作り方や体を温める「陽性」の食べ物については、こちらを参考にしてください。
取材協力:石原新菜さん
イシハラクリニック副院長。主に漢方医学、自然療法、食事療法を用いて、種々の病気の治療にあたっている。関連書籍の執筆や講演活動、TV・ラジオへの出演など、多方面にわたり活躍中。
クリニック情報:
イシハラクリニック(完全予約制)
HP:http://www.ishihara-yumi.com/clinic
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