【プロ直伝】革靴のお手入れの基本 正しい磨き方や日々のケア方法を解説
お手入れや定期的なメンテナンスで、革靴の寿命は大きく変わります。ただし難しいことはなく、基本的には履いた直後にホコリを払い、月に1回程度靴磨きをするだけ。やり方を間違えなければ、10年や20年履き続けるのも夢ではありません。
革靴の正しいお手入れやメンテナンス方法について、靴の修理や靴磨きでおなじみのミスターミニットを運営するミニット・アジア・パシフィック株式会社 長嶺素義さんに、実演も交えて詳しく教えていただきました。
※記事中の内容は特に明記しない限り、一般的なビジネスシューズやパンプスなど形を問わず、表面が滑らかな一般的な革靴(スムースレザー)の場合です。
革靴を履く前に行うケア
買ってすぐの防水スプレーがベター
買った後すぐに防水スプレーをしておくと、水をはじくだけでなく汚れが付きにくくなります。特にスエード素材の場合は、水を染み込みやすく汚れが付きやすいので、できる限り防水スプレーをするようにしましょう。一方、エナメルや爬虫類系の素材の靴は防水スプレーをしないでください。逆に素材を傷める可能性があります。
防水スプレーは1~2週間ほどで効果がなくなるので、こまめにスプレーする必要があります。必ず屋外で、風上から風下に向かって、靴から20cmほど離してスプレーします。全体にスプレーしたら10分ほど乾かし、もう一度スプレーするとよいでしょう。靴から離してスプレーするのは、細かい粒子が革の表面に付くことで水分をはじく効果があるためです。

【よくある誤解】「近づけてスプレーすると効果が高まる?」
十分離さずに近づけてスプレーすると、粒子が細かくならないうちに革に付くため、水をはじく効果が薄れます。また、何度もスプレーして厚塗りした状態になると、通気性が悪くなりこちらも逆効果になります。
革製や滑る靴底は裏貼りを
女性用パンプスなどは、デザイン性のために靴底が革製の場合があります。そのままアスファルトの上などを歩くと革が削れ、その上のアッパー部分まで傷んでしまうことも。履く前に専門店で裏貼りをしておけば安心です。また、靴底がラバー製でも、薄くて滑りやすい場合には裏貼りをするのもいいでしょう。
脱いだ直後のお手入れ
ブラッシングでホコリや汚れを払う

革靴を長く履くには、脱いだ後のお手入れが大切。やることは簡単で、靴用のブラシで全体のホコリや汚れをサッと払うだけ。ブラシは馬毛のような毛足が長く柔らかいものを使い、革の境目など細かいところは毛を入り込ませてかき出しましょう。それでも、一足15~20秒ほどで終わるはずです。
スエードの場合は、毛の流れに逆らってブラッシングしてホコリや汚れをかき出し、最後に毛の流れに沿って整えましょう。
ホコリが付着すると、油分や汚れが付きやすくなり、場合によってはカビなどの原因にもなります。ホコリや汚れが目に見えるようになったら、もうすでにたまっているということ。そうなる前に、理想は「毎回」、少なくとも2~3回に1回はブラッシングしてあげましょう。
1日は通気性の良い場所に出しておく
革靴は扉付きの下駄箱などにはすぐにしまわないようにしましょう。足は1日にコップ1杯程度の汗をかくと言われています。その状態で扉付きの下駄箱にしまうと、靴は湿ったまま。何度も繰り返すと、カビが発生する原因になってしまいます。
玄関や通気性のいい場所、扉のない棚に置くなどして最低1日程度は乾かし、扉付きの下駄箱にはその後でしまうようにしてください。

さらに湿気対策として、1カ月に2~3回は下駄箱を1日中開けておくなど、定期的に換気しましょう。
【よくある誤解】「一晩おいて下駄箱にしまえば大丈夫?」
靴が吸い込んだ汗は一晩で乾かないこともあります。できれば長めに1日は乾かしておきましょう。
靴磨きに必要な道具と正しい手順
週に2~3回履いている革靴は、1カ月から1カ月半に1度ほど靴磨きをしましょう。もし、同じ革靴を毎日履いているなら、2週間に1度ほどは靴磨きをしたいもの。それ以上間を空けてしまうと、革の劣化が避けられません。
靴磨きの道具一式

- 馬毛のブラシ(またはやわらかいブラシ)
- 豚毛のブラシ
- 革靴用クリーナー
- 革靴用靴クリーム(1つだけ手に入れるなら無色のもの)
- 綿100%の布(タオル地でないもの)
靴磨きのステップ
靴磨きの基本的なステップは以下の通りです。慣れれば1足10分程度で終わるはず。
1. 馬毛のブラシで汚れを落とす

まず、シューツリー(シューキーパー)を入れて靴のシワを伸ばします。最初は日々のブラッシング同様、馬毛のブラシなどでホコリや汚れを落とします。
2. クリーナーで汚れを落とす


綿100%の布にクリーナーを付け、靴全体を拭いて汚れを落とします。このとき、ゴシゴシとこするのは厳禁。クリーナーでサッと拭いて落ちなければ、こすっても落ちません。むしろ革の表面が荒れるなど傷んでしまう可能性があるので、どうしても落としたい場合には専門店に相談しましょう。
3. 少量の靴クリームを塗布


片足につき米粒3~5粒程度の靴クリームを、靴全体に塗布します。付属のスポンジまたは使い終わった歯ブラシなど、クリームを吸収しない素材を使いましょう。このとき、塗りムラがあってもOK。次のステップで靴全体に刷り込みます。
4. 豚毛のブラシで磨き、クリームを革に浸透させる

豚毛のブラシでブラッシングをして靴クリームを伸ばしながら、熱を発生させて溶かして革の中に浸透させます。豚毛は馬毛より硬いため、速くブラッシングすることで熱が生まれ、靴クリームが溶けて浸透しやすくなります。つま先が曲がる部分など革にシワがある部分は、シワに沿う方向にブラッシングして刷り込むようにしましょう。
5. 残った靴クリームを乾拭きして拭き取る


ステップ2で使った布のきれいな部分を使い、靴全体に残った靴クリームを拭き取ります。
【よくある誤解】「靴クリームはたっぷり付けたほうがいい?」
靴クリームを靴にべったりと塗り付ける人がいますが、クリームをつけすぎると、表面に油分が残ってホコリが付きやすくなり、むしろ革にとってマイナスです。革に浸透する分量だけを、適量使うようにしましょう。量が少ない分にはほとんど問題ありませんが、多いとダメージに。
素材や色ごとの定期ケア
靴磨きをするのは、表面がつるつるとした一般的な革靴(スムースレザー)の場合のみ。それ以外の素材の場合には別のケアをします。また、色付きの靴クリームについても解説します。
スエード
スエードは馬毛のブラシなどでブラッシングをして、防水スプレーをしておきましょう。
色が落ちた場合には補色スプレーが有効な場合もありますが、失敗すると戻すのが難しいため、専門店への相談をお勧めします。また、ブラッシングで落ちないほどの汚れが付いた場合にも専門店に相談してください。
エナメル
エナメル素材のお手入れは布で乾拭きをするだけ。こだわりたい方はエナメル専用のクリーナーを使いましょう。防水スプレーは素材がくすんだり溶けたりする可能性もあるので厳禁です。
色付きの靴クリーム
透明の靴クリームではなく、靴の色に合わせた靴クリームなら色が落ちた部分の補色ができます。慣れてきたら靴ごとに揃えるのもよいでしょう。色落ちや取れない汚れの場合には、専門店に相談したほうがいいでしょう。
雨の日やカビなど、トラブル時の対処は?
雨の日に濡れたらとにかく乾かす!
雨の日に濡れてしまったら、乾かすのが第一。玄関にいつもどおり置きっぱなしにしていると靴底が乾かず、カビ発生の原因に。お手入れ用のブラシなどを靴のつま先の下に挟むと、床との隙間ができて乾きやすくなります。ドライヤーを使って乾かすのは、革を縮めたり傷めたりするので厳禁です。
中に新聞紙を入れるのはNGではないものの、湿った新聞紙を入れっぱなしにするとカビの原因になるので数時間ごとに入れ替えるようにします。大体乾いてきたら、シューキーパーで整えます。数日経ってしっかり乾いたら靴磨きをしましょう。
少しのこすれなら靴クリームで
表面が少し傷ついたりこすれたりしたくらいなら、いつも通りの靴磨きの手順で、靴クリームで補修できます。深い傷になると繊維質が粗くなり、靴クリームでは補修できないため、専門店へ頼みましょう。
泥や砂は叩くように取り、乾いてからブラッシング
泥や砂が付いて濡れている状態なら、キッチンペーパーなどで軽く叩いて汚れを取ります。このとき、決してこすってはいけません。落ちない場合には、しっかり乾かしてから馬毛ブラシなどで落としましょう。多くはブラッシングで落とせます。
カビが生えた靴は専門店へ
「下駄箱から出したらカビが生えていた……」というとき、まずはビニール袋などに入れて隔離し、できるだけ早く専門店へ持参しプロに任せましょう。その時心配なのは、下駄箱に残っているカビ。カビが生えた靴を置いてあった周辺はアルコール除菌シートなどで拭き取りましょう。隣に置いていた靴が心配なら、靴磨きをすれば万全です。
ニオイが気になったらまずは乾燥
靴の中に湿気がこもった状態だとニオイが発生しやすくなるので、履く頻度を減らし、乾燥させるのが大切です。また、イオン系の無臭の消臭スプレーなどを使うのもよいでしょう。どうしても取れないようなら専門店に相談してください。
保管する場合も定期的にチェックを
長期間履かない靴でも、風通しのよい場所に出しておくのが理想ですが、収納スペースなどの関係で靴箱にしまいなおすケースもあるでしょう。その場合は、除湿剤を使うなどして、湿気がこもらないようにしましょう。
また、しまいっぱなしにせず、定期的に出してチェックしましょう。革靴は定期的に履くほうが長持ちします。ときどき履いてあげるのも大切です。
普段履いている革靴も、かかとの減り具合や細かい傷など、定期的に確認するようにしましょう。かかとが減りすぎていたら専門店で貼りなおし、細かな傷があったら靴クリームで補修するなど、靴に興味を持ってケアしてあげることが長持ちの秘訣です。
備長炭と活性炭を配合した除湿剤でジメジメ・ニオイ対策
靴の湿気やニオイが気になるときは、除湿剤を使用しましょう。備長炭と活性炭を配合した「備長炭ドライペット くつ用」なら、靴内部の湿気と汗ムレ臭などのニオイを除去します。

取材協力:ミスターミニット 長嶺素義さん
営業本部 営業推進一部 店舗販促課 マネージャー
長嶺素義
2014年の「靴磨き」サービスを立ち上げ、年間50万足以上の実績にまで成長させる。
また催事や靴磨き講座など、全国でのイベントも担当。
前職ではレザーバッグを中心とした革製品の販売も行っており、レーザー全般の知識に精通。
